公認心理師と臨床心理士の違いについて、明確に述べることは難しいと考えられます。 公認心理師は、2017年に公認心理師法が施行されたことから、2018年からできることになっている新しい心理学系の唯一の国家資格です。ですので、公認心理師が今後どのようになっていくかは、実際に将来になってからでなければわかりません。
とは言え、現時点で公認心理師と臨床心理士の法律上・カリキュラム上の違いについては述べることができますので、そのあたりの似ているところや違いについてご紹介したいと思います。
公認心理師と臨床心理士の業務の違い
「公認心理師と臨床心理士の仕事は、どのように違うのだろう?」と疑問に思われる方も多いと思いますが2018年度に初めて国家試験が開催された「公認心理師制度」はまだ始まったばかりです。
前述のように、従来から臨床心理士として勤務する方の多くが公認心理師資格を取得し公認心理師と臨床心理士の業務の違いを明確に区別することは現状困難です。
また、公認心理師も臨床心理士もいずれも5領域といわれる[医療・教育・産業・福祉・司法]という複雑な領域にまたがって働くことのできる資格で業務独占はなされていないことから、公認心理師と臨床心理士のいずれかにしてはいけない技術というものは存在しません。
公認心理師は、法律上「心理査定(アセスメント)」「心理面接(カウンセリング)」「関係者への面接」「心の健康に関する教育・情報提供活動」の4つが業務として定められています。それに対する違いとして臨床心理士は「臨床心理学的査定(アセスメント)」「臨床心理学的面接(カウンセリング)」「地域援助」「研究(臨床心理学)」の4つが業務として定められています。
しかし、今後は「公認心理師資格を持っていないと出来ないこと」が多く出現する可能性が見込まれます。その一例として、医療機関での勤務があります。しばらくの間、診療報酬上は公認心理師資格を持たないで心理職として勤務していた者も、公認心理師としてみなすという<みなし規定>が取り決められました。
この<みなし規定>は「公認心理師が一定程度養成されるまで」の措置であるため今後医療でカウンセラーとして働きたい場合、公認心理師を取得していることが求められることが見込まれます。
公認心理師と臨床心理士のカリキュラム上の違い
臨床心理士が、修士課程の2年間のカリキュラムで養成されるのに対し公認心理師は学士課程の心理学のカリキュラムを必須とし実務経験や修士課程での訓練で受験資格が得られるようになっています。
臨床心理士を取得するためには修士課程に進学し、大学院に通いながら修士論文を執筆するなどの研究者としての能力を高めることが期待されます。
また、公認心理師は基本的に大学の4年間と大学院修士課程の2年間を合わせた最低6年の間心理学を学ぶようにカリキュラムが作られています。
その背景として、公認心理師はもともと臨床心理士の団体だけでなく心理学諸学会連合と呼ばれる「臨床」以外の心理学の専門家による連合、また精神科医の団体の話し合いにより成立した資格です。そのため、公認心理師カリキュラムでは臨床心理学にあまり偏りすぎないように、できるだけ万遍なく心理学や医学(精神医学を含む)を学べるように作られています。
ということから、公認心理師は心理学全体に関わる(臨床だけではない)心理学の専門家として担うことが期待されています。
公認心理師と臨床心理士の違いを明確に述べることは難しいものの、このような法律上やカリキュラム上からその違いを垣間見ることができるのかもしれません。