予防法務に関して、法務部に求められるのはどのような取り組みでしょうか? |
高石
多くの日本の大企業は予防法務の段階に入りつつありますが、まだ消極的な予防法務の段階の企業が多いのではないかと思われます。予防法務といっても、いくつかのレベルがあるわけです。まず法務部にきた相談をひとつずつ確実に処理していくという方法があります。これはいわば受け身の予防法務です。待ちの姿勢で、来た相談だけを処理していた場合、相談に来ないリーガル・リスクは社内に転がったままという状態です。それを一歩進めて、積極的な予防法務の段階に移らなければなりません。法務部が潜在的なリーガル・リスクを発見して、アクティブにその問題をフォローし、解決していく。その仕組みを考えることです。
予防法務がそのレベルまで徹底すれば、次の段階が戦略法務です。戦略法務とは私が以前から提唱している考え方で、法務部の知識・経験の蓄積を利用して、積極的に企業戦の戦略や基本的方針の立案に貢献していくことです。いわば法をビジネスや企業を発展させるツールとして利用することです。
ただし戦略法務の導入には前提条件があります。組織としての予防法務が完全に確立した上で、実施しなければならないということです。戦略法務は法の能動的な使い方ですが、予防法務が徹底していないと、法のご都合主義的な使い方になってしまい、かえって弊害が生じかねません。予防法務が確立した上で、戦略法務を実施する。その段階までいけば、欧米の大企業並の法務部といえるでしょう。
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