初めに司法制度改革についてお聞きしたいと思います。2001年夏の最終答申に向けて、司法制度改革審議会の本格的な議論が始まりましたが、その審議の目的は「国民が利用しやすい司法制度の実現」とされています。当然、司法制度の利用者には個人とともに企業が想定されるわけです。企業法務に詳しい高石先生は司法制度改革にどのようなことを期待されていますか? |
高石
企業や個人がリーガル・サービスにアクセスしやすい状況を作るという改革の方向は正しいと思います。東京や大阪といった大都市にはそれなりの数の弁護士がいますが、弁護士が少なく、リーガル・サービスにアクセスしにくい地方が多いという状況が事実としてあるわけです。その上、日本では弁護士の広告宣伝は原則禁止に近い形になっていることが、よりアクセスを困難にしています。大企業は自由に法律サービスにアクセスできていますが、小さい会社やベンチャー、一般人にとっては、どこに自分のニーズに合った弁護士がいるのか? 自分が負担できる費用で望むようなサービスが受けられるのか? そういった情報がほとんどないというのが現状です。司法制度改革では、そのような状況を改善する必要があります。
高石
大きな法律事務所が徹底した広告を展開するようになれば、広告する力のない弁護士事務所のビジネスをますます圧迫してしまう。その結果、事務所の格差はますますひろがるのではないか。そういう懸念が一部にあるようです。しかし、あくまで利用者のリーガル・サービスへのアクセスという観点から考えるなら、弁護士としての品位を失わない広告宣伝であれば、許可されるべきでしょう。情報開示がなければ、利用者はコストやサービスの内容が分からないわけですから。
広告規制問題の他、法律事務所の法人化の議論も行われるようです。これについては、どうお考えですか? |
高石
私は以前から法人化はぜひ進めるべきだと考えています。法律事務所の経営が今のような個人企業の形態のままでは、どうしても資本蓄積が難しく、事務所を発展させる上で限界があります。そのため、いつまで経っても資本基盤が非常に弱い事務所としてしか存続しえないという大きな欠点があります。きちんとした資本蓄積ができる海外の法律事務所と比較した場合、われわれ日本の弁護士は圧倒的に弱くなってしまう。そういう問題を解決するためにも、法人化は進めていくべきだと思います。
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