そのような時代を迎えて、社会福祉士の役割はますます重要になると?
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池田
「福祉のサービス利用化は不可避の流れだと思いますが、その点、欧米社会はもともとそういう契約に慣れた市民社会が形成されていて、自分の意思によって決定していくことが根づいているわけです。しかし、日本人はそのような契約文化に馴染んでいる方々ばかりではないはずです。特に高齢者などは福祉を受けたいというとき、自分で福祉サービスの資料を集め、内容を比較検討して、事業者と交渉するといった行為が苦手な方が多いのではないでしょうか。
福祉の利用サービス化によって、利用者と事業者は対等になるという言い方がされますが、対等というのは意思と財力を握っているからこそ言えることです。
権利と義務という西欧型の市民社会に向かっていく中で、その流れに乗れない人、乗りたくても乗れない人、自ら乗らない人についての問題が大きくなっていくと思います。その問題にどう対処していくか? 西欧諸国で、そのような社会問題にきちんと関与してきたのはソーシャルワーカーです。そういう意味で、私たちとしても、これまで以上に力を発揮していかなければならない時代が来ると思っています。社会福祉士会としても、研修制度を確立して、スキルやツール、倫理基準を会員に提供して、社会福祉士の専門性を高め、力をつけていきたいと思います」
自己責任の時代においては成年後見法がきわめて重要な意味をもつということですね。
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池田
「今は過渡期であって、やがて日本にも福祉はサービスという考えが根づいていくのかもしれませんが、少なくても、早急に考慮すべきなのが、意思能力・判断能力の低下によって、“自分で決められない人”、成年後見制度の対象となるような人をどのようにサポートしていくかです。声無き高齢者、自分で決められない方々、判断能力や意思能力が低下された方をどのように保護していくのか? 低所得者や声無き方々が使えないような制度になってしまってはいけない。自己決定権をきちんと保証するのが、この成年後見法であるべきで、権利擁護、権利保障のため、さまざまな利用者支援の仕組みが必要になってくると思います。私たちとしては低所得者などが使えるようにするために、自分で費用が出せない人は国で面倒をみるという考え方を求めていきたいと思っています。具体的には、日本以外の欧米諸国にあるような公的後見人、あるいは国家後見の制度です」
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