成年後見法によって、従来の制度より良くなる点はどこでしょうか?
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池田
「まず、これまでは禁治産(注2)の後見、準禁治産の保佐の二つしかなかった分類に、補助類型が新設されたことがあげられます。この補助は使い方次第によっては、後見や保佐類型に近い状態の方でも利用できるよう、柔軟に設計されていることが評価できると思います。
そして判断力があるうちから後々のことを自分で決めておくことができる任意後見という考え方が入ったことです。
あとは法律上、身上監護の位置づけが明確になったことが評価できると思います。私たちは身上監護を成年後見法の指導理念ととらえていますから。
ほかにも、今までの制度の問題視されていたいくつかの点が改良されました。例えば、これまで、禁治産であることが戸籍に記載されていたのですが、それがなくなりました。複数後見が認められなかったけれど、それが認められるようになる。あるいは、監督制度がしっかりしたことなどが、制度上の改良点としてあげられると思います」
注2 「禁治産」
これまで日本の成年に対する後見に関する法律は、判断能力が十分でない者を二分していた。「心神喪失ノ常況ニアル者」(民法7条)には禁治産者宣告をして後見人をつけ、「心神耗弱者」(11条)には準禁治産者宣告をして、保佐人をつける。禁治産者の後見人は代理権を有し(859条1項)、本人とともに取消権を有する。準禁治産者の保佐人は重要な財産行為について同意権を有する(12条)とされている。
身上監護が明確にされたことは福祉の専門家にとっては大切な意味をもつとということですね。
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池田
「一般的に成年後見制度といいますと、利用者の財産管理という面がクローズアップされがちです。しかし、この制度をどのような目的のために使うかを考えたとき、利用者は一銭でも多く子孫に残したいから成年後見制度を使うのかと言えば、そうではなく、自分の財産を自分自身がより良く老後を生きるために使いたいということははっきりしていると思います。であれば、財産管理だけではなく、本人が望む生活をいかにして手配し、実現していくか、いわゆる身上監護は成年後見制度において大きなウエイトを占めてしかるべき事項であるはずです。今回の法案は、要綱試案に修正が加えられて、生活に配慮するという面が一段と強く打ち出されました」
成年後見法における社会福祉士の役割はどのようなことになるでしょうか?
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池田
「私たちは対象者の生活を全般的に支えるということで、この法律に深くかかわることになると考えています。
事実、欧米諸国における成年後見法の運営の実態を見ますと、基本的にその仕事を担っているのは、日本の社会福祉士にあたるソーシャルワーカーたちです。そして、重大な法律事項が発生したときに、弁護士などの法律の専門家がかかわる形になっているのです」
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