第一条 [天皇の地位・国民主権] 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
第六条 [天皇の任命権] (1)天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。(2)天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条 [天皇の国事行為] 一 憲法改正、法律、法令及び条約を公布すること。
二 国会を招集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任命並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
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反町
前文に続いて、第一章から検証していただきたいと思います。 |
西村
天皇の地位については、第一条の「象徴」ということばかりが言及されますが、私はむしろ第六条、第七条にこそ日本国における天皇の地位が端的に現れていると見ます。われわれ議員は国会において内閣総理大臣を指名しますが、それだけでは就任できません。第六条第一項に「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」と書いてあります。同第二項に、最高裁判所の長たる長官も同じ定めがあります。三権のうち行政と司法の長を天皇が任命するのです。国会についても、われわれが勝手に東京に集まっても国会を開くことはできません。第七条第二号で、「国会を招集すること」が天皇の国事行為とされています。天皇が招集してはじめて国会になる。つまり三権すべてについて天皇がスイッチを押すことが要件とされているのです。また第七条第三号に「衆議院を解散すること」とあります。国民に選ばれた衆議院議員の身分は天皇の行為があってはじめて喪失する。つまり、天皇の国事行為がなければ、三権は正統に機能しないと書かれてあることになる。第六条と第七条は明らかにわが国を立憲君主国と規定していると思います。しかし、第一条に戻ると、「日本国民統合の象徴」とされている。第六条と第七条で明確な天皇の国政における至高の地位から見て、具体的に何を言っているのか分からない。歴史性がなく、その地位が何に由来するのか分からないのです。
政治権力は、ひとつの権威に源を発したものでなければならないと思っています。
反町
例えば、アメリカ大統領は就任式に望んで、聖書に手を置いて宣誓しますね。 |
西村
それは聖書に源を発した権威付与の儀式です。天皇ははわが国の歴史を溯る悠久の神話にその源を発しているという点からするなら、「象徴」という言葉には、歴史性がなく、国政における天皇の地位を現す言葉としては相応しくないと思います。また憲法前文にも、天皇制のことがまったく出てこないことも納得できません。
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