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全国3万6000人が自分のスタッフに


--行政書士がコンサルティングを行う際、メリットとなるのはどのような点でしょう?
「士業は地域に密着して仕事をすることが多いわけです。司法書士の登記業務は地方法務局ごとですし、税理士も地方ごとの税務署を相手としています。私たち行政書士も一面、地域密着型ではあるのですが、同時に広域型の仕事もします。そのようなときは、全国にいる3万6000人の行政書士をすべて自分のスタッフとして、相互協力して業務を行うことができるのです。これが他の士業と大きく異なる特徴です。地元密着の専門家で
ある行政書士が全国規模で繋がっているという強みがあるわけです」
--実際の業務において、その連携はどのように活用されていますか?
「例えば分割・民営化や合併などで企業の社名変更があったとき、全国すべての支店登記で名称変更の手続きをします。その中でも、自動車の登録は大きな仕事になります。全国の陸運支局で、支店のすべての自動車について名義変更を行うわけで、まさに全国規模で連携している行政書士にしかなしえない大規模な作業です。
 また産業廃棄物関連にマニフェスト制


度(注3)があります。廃棄物を排出した企業に、最終処分までの責任を負わせる制度で、自動車でいえば、工場のラインを出てから廃車処分されて鉄の塊になるまで一連の作業を確認する制度です。行政書士としても、そのあらゆる段階で業務を行いたいと取り組んでいるところです。自動車でいえば、新車登録だけでなく、廃棄処分も扱うわけですが、そのためには全国規模で処理場をいくつか押さえておかなければなりません。そのときも全国規模の連携が役に立ちます」
--では、行政書士がコンサルティング業務を遂行する上で、どのような課題があるのでしょうか?
「ひとつは報酬の形式です。行政書士の報酬は基本的には書類作成料で、コンサルティング業務については毎月定額の顧問料というような形にしていますが、これを、どのような形に設定していくか。単に費やした時間で計算するのか、与えた情報の深さや意味などを評価していくのかが課題となります。
 もうひとつは与える情報の質です。コン


サルティング業務とは知識財産を提供していくことです。情報を加工して、その企業にとって最適な答えを出す役割を果たさなければなりません。企業が足りないところを補完するだけの価値ある情報を提供するためには、行政書士が自らの能力を高める努力をするとともに、行政書士会としても、研修制度などを通じて質的向上を実現させる体制作りが求められています。
 最近、和歌山県の『毒入りカレー事件』について中学2年の女子生徒が書いた
論文が話題になりました。当初、食中毒であるとか、青酸化合物であると誤認され、誤った処置を施されていたことを指摘する内容でした。中学生になぜそのようなことができたのか。ネット上には専門的な医療情報がふんだんにあります。彼女はそれを検索して、行政ミスや医療過誤など専門家としての責任を追及されるべきポイントを指摘したのです。
 そのことが端的に示すように、高度情報社会において入手できる情報というのは、プロとアマの差はありません。膨大


な情報から必要なものを捜し出して、それを組み合わせ、事実を積み重ねて推論し、方向姓を見出していく。そのような能力があるかないかが問われる時代なのです」


注3 「マニフェスト制度」
1997年、廃棄物処理法改正。排出者の監督責任が明示された。マニフェスト(管理票)による廃棄物の流れの監視を義務づけたもの。

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