鳥海先生が所属されている、あさひ法律事務所は日本でも有数の規模の法律事務所ですが、この事務所の設立の経緯をお聞きしたいと思います。 |
鳥海
設立したのは平成4年7月です。ふたつの事務所が合併したのですが、その大きな理由は専門化と総合化が両立する、国際的にも一流との評価が得られる法律事務所を作ろうということです。桝田淳二と江尻 隆の事務所は国際関係の業務を中心にしていました。訴訟まで手を広げたいという希望をもっていましたが、訴訟に強い弁護士を育てるのは難しいわけです。一方、東京八重州法律事務所は国内の訴訟事件が中心で、渉外企業法務まで扱いたいいう若い弁護士が増えていたのですが、そのノウハウやネットワークがなければ、難しいため、なかなかその希望に応えられなかった。若い有力な人を集めるためにも、専門化、総合化、国際化というニーズに応えられる事務所にしたいという希望があったのです。また今後、外国法事務弁護士事務所が増えることは間違いないと思われましたが、われわれは、それに反対するだけでなく、海外にも事務所を作っていくべきだと思いましたし、国内でも総合化した事務所を作るべきだと考え、合併することで、新たな事務所を作ることにしたのです。
設立にあたって、何らかのハードルはございましたか? |
鳥海
申し上げたような理念に関しては共通していましたが、やはりそれぞれの事務所でカルチャーが違う部分がありました。まず弁護士報酬のシステムが違うわけです。訴訟の業務の報酬は着手金と成功報酬からなりますが、渉外企業法務はタイムチャージですから、タイムシートを付けて時間管理をしなければならならい。着手金、成功報酬の制度は当然、経費も報酬に入りますので、訴訟を中心にしていた弁護士にすれば、「タイムシートなどつけていられるか」という感覚です(笑い)。また個人の依頼者の仕事では基本的には弁護士が主導する傾向がありますが、企業法務となるとクライアントのニーズに合わせる面がより強い。そのような違いがありました。
異なる文化をもつ事務所が統合したことによるメリットもあったと思いますが? |
鳥海
仕事の面で、間違いなく強くなりました。渉外関係をしてきた者にすれば、難しい裁判があったとき、訴訟を中心にしてきた弁護士と組むことは訴訟技術や能力という面で相当、力になります。逆に訴訟を中心だった弁護士にすれば、詳細で緻密な契約書を作るとか国際的な事件への対応ということで、やはり組んで良かったということになっています。訴訟は強いけれど、契約や交渉はあまりやらないとか、逆に渉外事務所と目されると「あそこは裁判をやらない」と見られます。ひとつの法律事務所であらゆることがまかなえる“ワンストップ・ショッピング”を実現できたことが合併の大きな成果だと思います
鳥海
50名で、今年、新たに10数人、入る予定です。スタッフを含めると100人少しです
海外における知名度という点でもメリットがありましたか? |
鳥海
非常にあります。合併から2年くらいで相当、知名度は高くなって、どこに行っても知られるようになりました。
鳥海
はい。何年までに何人にしなければならないという目標を定めているわけではないのですが、よりタイムリーに、よりクオリティの高い仕事をするためには、人数を増やしていかなければならないと思います。企業の買収前監査も相当丹念に行うようになっていますし、株主代表訴訟なども、短期間に多くの人を入れないと処理できない。倒産もそうです。海外子会社を多く抱えている企業の倒産は、相当大きな事務所でなければこなせません。そういうニーズがあったときに、即座に応える体制を作ることまで考えますと、まだまだ人が足りません。
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