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21世紀の大学象とは?
社会科学系の産学協同


反町
実務との連携ということで、産学協同についてお聞きしたいと思います。
    手塚
    産学共同という言葉は1960年代に非常に忌み嫌われました。それ以来、日本の大学はオープンではなかったのですが、今後はどんどん進めるべきでしょう。民間資金を受け入れて、研究所が共同研究を行う。あるいは相互の乗り入れができるようにすべきときが来ていると思います。
反町
法学部や経済学部など、社会科学系の産学協同はどのような内容が考えられますか?
    手塚
    私たちが民間に提供できるものとして、一つには起業におけるノウハウがあります。また私の領域でいえば、今、経団連を筆頭に、確定給付型の企業年金はもうもたないという声が出ています。国際会計基準の導入によって、企業年金の今までの蓄積、ストックがないため、全部、負債の部に記載される。それを確定拠出型年金に変えていこうということになっています。そのとき金融証券市場でどういう分析をして、どういうプログラムを作っていくのかが問題になります。そのような金融工学では、日本はアメリカに10年、20年、遅れています。そのようなことについて、企業とコンピュータのネット上で情報を共有しながら、情報を分析していく、あるいはプログラムを組んで行くことができる。そういう能力を持っている研究者なら、それを提供していくことは当然だと思います。
     また従来型の人事や会計、法務の分野でも、そのノウハウの蓄積している人たちは、それを広く提供するだけの期待が持てます。私たちは職業人の再教育プログラムを考えています。つまり、もう一度、自分自身を見直して、次のステップの出発点にするということです。職業人を受け入れ、その人たちが過去20年なり、30年なり社会人としてやってきた実務を大学院という場で再検証し、自分の経験を学問の中に位置づけながら、次のステップへの転換点を作り出すというものです。
反町
理科系ならば、教授がもっている特許をビジネス化するというように、明確にその対価が見えるわけですが、社会科学となると、産学協同といってもイメージがパッと浮かばないですね。
    手塚
    そういう面は確かにあるかもしれないですね。
反町
大学の教授には自らの専門分野については詳しい人が多い。ある条文のある言葉について延々と本に書ける。しかし、その学問が実務に重ならないということが起きる。
 教授としては、今まで何十年間も探求してきたことを講義しているほうが楽でしょうが、そのような研究者との産学協同では民間企業のほうとしては困ってしまうわけです。法律、経済、会計といった社会科学系の領域でも、大学が産業界をリードする分野を育てていかなければならない。
    手塚
    確かに新しい問題は教科書に書かれていないことがほとんどです。突拍子もない分野から新しい研究課題が生まれます。境界領域から先端領域が出ている。これは従来のように、民法学の範囲であるといった基本的な枠組みでは、もはやとらえきれないし、分析しきれないのです。学者がその認識に欠けていることはご指摘の通りだと思います。
反町
反対に実務家は即物的なことしか言わない。学者が語る規範とはまるで水と油です。学者は実務家を即物的だと言い、実務家は学者を偉い人だからと言って近寄ろうとしない。
    手塚
    その垣根は強行突破していかなければならないでしょうね。
反町
実務家サイドも、銀行で部長をしていたとか、為替ディーラーだったという経験にもっと自信をもって、どんどんモノを言っていく、自分の経験を不十分であっても理論化していくという開き直りをもつべきでしょう。
    手塚
    私は大学はそういう中から、実力がある人の力を借りるべきという意見です。
反町
お互いに腹の中で馬鹿にしているようでは、産学協同は不可能です。ロースクールについてもまったく同じことが言えると思います。


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