反町
文部省が大学設置基準を緩めるようですが、今後は同じ国立大学でも、大学ごとに教育の内容が大きく変わるということになっていくのでしょうか?
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手塚
そうなるでしょう。例えば、ロースクールやビジネススクールに入学する者は、特に法学士、経済学士を必ずしも要求しない、高専でも外国人学校でもいいということになります。教官についてはそれぞれの大学の人事基準で行います。私たちもどのような実務家を入れるか、その基準を議論しているところです。
反町
千葉大学の場合、大学院改革では、どのような対応をとられますか?
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手塚
これまでも新しい国立大学として、学部も法律と経済の複合学部にするという新しい方向を出してきました。大学院改革については専門職業人を養成するのに相応しい教育ができるような内容にしたいと考えています。
反町
大学にはどのようなことが求めているとお考えですか?
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手塚
日本の国際取引の推移を見ても、1960年代後期の開放経済化以降、国際基準のもとで国際取引をする状況になってから、ダンピング問題を初め、日本政府はつねに外圧に対応してきました。その状況に対して、学界は後からフォローするという状況がずっと続いています。今後はそうではなく、国際情勢を先読みして、どういう方向を打ち出すべきかまで発言していかなければならないと思います。
反町
金融の分野でも新たな教育が求められているのではないでしょうか?
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手塚
日本では、銀行、証券、保険といった業界が開放経済に立ちいかなくなり、公的資金が導入されて、国民の負担で、国が梃入れする構造になっているのが実態です。しかも、今後それらの産業がもうワンラウンド上に行けば、完全に開放された市場で国際競争に対抗していかなければなりません。
アメリカやヨーロッパではアナリストやトレーダーとしての専門知識をもった人材が大量に蓄積されています。年々、そのための大学教育を受けた人が五万と出て、しかもそのうち半分くらいしか専門的な仕事につけない。それくらい専門家が溢れ、加えて競争が激しいわけです。翻って日本では、世界経済の動向を的確にとらえているようなアナリストを育成できなかった。バブル経済の頃には、各企業が社員一人あたりに何千万円という金をかけて、アメリカの大学などに出していましたが、それらの人材が十全に育ったとは言えません。帰国して、結局、今やリストラの対象になったりしているのが実態です。
今、外資系金融機関はインターネットでドル建てで金融商品や証券の売買ができるシステムを導入しています。日本の業界はそれに対応すべくもない状況です。恐らく、そういうことが次に問題になっていくでしょう。
反町
大学が持っていた弱点を専門大学院でどのようにカバーするかが問題ですね。
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手塚
私たちはミクロの計量分析経済で、きちんとしたアナリストを育てられるよう、経済関係の専門職業人のための大学院を作りたい。その観点から、専門人、国際人の参画をどんどん進めていきたいと考えています。
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