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高齢者をめぐるトラブル



まず、この法律が必要とされる社会的背景からお聞きしたいと思います。
    額田
    「直接的な端緒は社会の急速な高齢化です。それを期に、高齢者を取り巻く問題の全般的な見直しが必要となり、その中で、法制面から援助する成年後見制度の必要性が認識されたということです」

法的な援助を必要する対象として判断力が衰退した高齢者の問題があると思います。そのような高齢者をめぐる法的トラブルで、典型的な事例としてはどのようなものがありますか?
    額田
    「いろいろなケースがあります。消費者被害に関するものでは、豊田商事事件といった大規模な詐欺事件のように社会の耳目を集める事件以外にも、一人暮らしや高齢者のみの世帯に対する商取引には、高額な着物の販売や株式取引の勧誘といった通常の経済活動の中にも、行き過ぎと判断されるような事例が数多くあります。
     また高齢者の財産を巡る親族間のトラブルにもさまざまな形があります。ストレートに親族間で財産を取り合い、紛糾してしまう事例。禁治産宣告の申立に関する事例。あるいは両親の介護をめぐるトラブルなどです。介護の問題の形で発生して、最終的には財産の争いになることもあります。親の介護と言いながら、その実は遺産確保のための身柄の取り合いと判断されるようなケースです。
     さらに福祉施設に関する問題もあります。これは報道されたケースですが、群馬県内のある施設で、収容している高齢者の多くが施設に寄付をする内容の遺言書を書いていたということがありました。本人たちの意図がどこにあったのか、明確にはわかりませんが、客観的に見て、異常な事例と言わざるをえません。これは財産管理面の問題ですが、それ以外にも、施設で高齢者に対する虐待が行われていたと報道されたこともあります。現行法では、そういったことに効果的な対応策がとることができないわけです」

来春スタートする予定の介護保険のためにも、成年後見法が不可欠と言えますね。
    額田
    「これまでの福祉は、お上が一方的にその中身や範囲を決めていましたが、これからは利用者の選択に委ねる。委ねた上で、契約という形で実現していく。今後はそれが福祉の大方針となります。そのトップバッターが介護保険です。保険に基づいて給付される福祉サービスの中身はすべて契約をもとに行うのですから、当然、利用者には契約締結能力が不可欠であり、その能力がない、あるいは不足している人には、それを補う代理人を決める形をとるしかありません。そのため後見制度が絶対に必要になるわけです」

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