↑What's New ←目次 ←討論表紙
0 1 2 3 4 5 6 vol.3

第145回通常国会を統括する

人的国際貢献の担い手


反町
日本を含め先進国が直面している高失業率は構造的なものです。途上国から安いモノが怒濤のように流れ込み、コストが割高な分野の企業はリストラの対象になる。それをどう再生するかが先進国共通の課題になっています。
    渡辺
    雇用対策は新たな視点をもって練るべきです。その方法のひとつとして、国際貢献があるのではないでしょうか。人員を出して、その人たちの生活を支援する形です。日本は国際貢献としてODA(注6)で、莫大な資金を出していますが、現地の人から本当に評価されているかは疑問です。それより人的支援のほうが見えやすいはずです。今までの日本の国際貢献の在り方というと金とモノが中心でした。それを人中心に転換することが絶対、必要です。今後のODAは人的貢献を最優先に考えるべきだと思います。
反町
日本の技術を世界で役立たせるわけですね。
    渡辺
    先日、オーストラリアに行きました。ある国会議員のご自宅に招待されたとき、炊きたての御飯が出たのですが、これが非常に美味しい。「オーストラリア産ですか?」と聞くと、「そうです」と、ご家族の方がもって来たコメの袋に「コシヒカリ」とあったのには驚きました(笑)。日本人に生産技術を学んだそうです。また日本の技術でリンゴのフジも作っていました。
反町
中国でも日本人がリンゴの栽培の技術指導をしています。そういう技術がある人、キャリアがある人が海外に出ることはすばらしいことですね。
    渡辺
    私たち国会議員が40名集まり、「アジアの子供に学校を贈る会」を結成しました。昨年、カンボジアに小学校を1校贈り、今年も贈る予定です。校舎だけでなく、カンボジアでは教師が足りません。日本から技術や文化を教える人を送ることも必要です。
反町
算数であれば、語学は関係ないですね。
    渡辺
    失職中の方に人的貢献の担い手になっていただく方法があると思います。ただし、きちんとした能力を身につけている方だけですが。
反町
アジア諸国との相互理解という点でも、意味がありますね。
    渡辺
    交流が盛んになれば、ムードは変わるものです。
反町
私たちは中国の公務員の研修団を毎月、1団体ずつ引き受けています。リンゴ栽培の作業を学習したり、農機具の工場で選定したりと税制や教育などに関する極めて実践的な内容で、参加した方には非常に喜んでいただいています。希望者は大勢いるのですが、この研修に公的な予算がほとんどつかないのです。
    渡辺
    今、文部省も留学生の受入れ数を増やそうとしていますが、すべての音頭を国がとらなければならないことはありません。民間にインセンティブを与え、行動を誘発するような政策、国際貢献が評価されるシステムを作るべきでしょう。教育や技術移転など21世紀、わが国のODAがアジア諸国から真に歓迎されることを願ってやみません。民間が積極的に国際貢献に取り組める政策、これを具体的に研究していきたいと思います。

用語

注1 機関委任事務
 自治体の首長や行政委員会が個別法令の委任により処理をする国の事務。自治体の首長は国の機関とみなされ、主務大臣の指揮監督を受ける。内容・運営の細部まで省庁の通達で指示されるため、地方自治体は事実上、中央省庁の下部機関と化す。

注2 法定受託事務
 地方分権推進委員会の勧告で示された自治体で処理する新しい事務分類。機関委任事務を廃止して、原則として自治事務に移行する方針だが、全国的事務の性格があり、自治体で実施することが国民の利便にかなう事務については自治体に委託して執行すること。

注3 新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法
 5月24日成立。日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改正で、「後方支援」「周辺事態」の定義がなされ、周辺事態法で周辺事態の対応と政府基本計画、国会承認について規定された。また改正自衛隊法では在外邦人の救出、武器使用について条文が追加された。

注4 日の丸・君が代を国旗・国家とする法(国旗・国歌法)
 日の丸・君が代を国旗・国歌と定める法案。8月9日の衆議院本会議で可決・成立。

注5 ODA
 日本のODA(official development assistance/政府開発援助)実績は1996年に94.4億ドル(東欧及び卒業国向け実績を除く)で、6年連続して世界最大の援助国となった。



衆議院議員・渡辺博道氏

昭和25年、千葉県松戸市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、明治大大学院を経て、昭和50年、松戸市役所に勤務。平成7年、県議に当選。商工労働社会委員、議会運営委員などを勤める。平成8年、衆議院選挙に初挑戦で当選。

←目次

↑What's New ←目次 ←討論表紙
0 1 2 3 4 5 6 vol.3
Copyright 1999 株式会社東京リーガルマインド
(c)1999 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.