反町
先生がおっしゃる実質的な公平を実現するため、弱者救済・保護の担い手としての法曹やそれに準ずる制度をどう改革するか。これに関して、6月2日、司法制度改革審議会設置法(注3)が成立して、本格的な議論の端緒につきました。司法制度の改革についてどのようにお考えですか?
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渡辺
私は司法改革は行政改革と一体化して進められるべきだと思っています。国全体の仕組みで見ますと、三権分立とはいえ、これまでは行政が肥大化し、司法が小さくなっていました。今、大きな課題となっているのは肥大化しすぎた行政府をスリム化することです。大きな権限をもって、事前の調整機能を果たしていた行政に一歩退いてもらう。そうなれば、いわば自己責任の世界となります。そのような社会では当然、個々の利益のぶつかり合いが発生しやすくなる。その調整は司法に任せようというのが大きな流れです。行政が縮小する時代を迎えるとき、受け皿となる司法の機能を拡大させなければ、自己責任社会に対応できません。
反町
審議会では、裁判システムをどうするかが大きな議論となると思われます。
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渡辺
現行の裁判制度の最大の問題は時間がかかりすぎることです。その背景に法曹人口が少なすぎることがある。今回、司法試験の合格枠を拡大して、1,000名になりますが、いずれ、さらに増やさなければならないでしょう。増員の問題もそうですが、固定的だった制度を弾力的に変えていく。それが司法制度改革におけるポイントになると思います。
反町
司法の役割は裁判所の外にもあります。弁護士以外にも、司法書士や税理士など士業の人たちが民間の経済活動や市民活動の中でもっと自由に力を発揮できるような法改正が求められます。行政監査では、士業が活躍していますが、民間の分野にも、さらに士業を積極的に使って、専門的な知識を利用していくことが必要です。
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渡辺
各士業にはそれぞれ高い専門性が求められるようになっているでしょうから、弁護士の肩書きがあれば、すべてできるかというと、難しい面もあるでしょう。
反町
特に弁理士などはそうですね。極めて専門的な仕事ですから、弁護士には難しい。現在、法律相談を業として行えるのは弁護士だけですが、士業はそれぞれの職務権限内での法律相談は許可すべきです。また裁判では法廷立会権や訴訟代理権を認めるべきです。裁判では内容や実態を熟知したプロが最終的な責任をもつ形にしなければなりません。
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渡辺
専門家は最初の段階から相談を受け、過程をすべて把握している。万が一、訴訟になっても決着点まで役割を一貫してできる。そのことは士業の方にとっても、大きな意識変革に通じるでしょう。
反町
最後まで面倒をみないのでは、自己責任をまっとうできません。司法制度改革というと、どうしても裁判中心の議論になりがちですが、裁判外を含めた改革が必要です。
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反町
また前提として、その国の司法制度をうまく機能させるためには社会にリーガルマインドが浸透していることが不可欠で、そのためには教育が大事ではないでしょうか。
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渡辺
その通りです。人間は一人では生きていけないから、集まって、社会を構成する。その大前提がある以上、個々の人間は互いに自分の欲求を抑えなければいけないことがある。それを小さいうちから教えて、社会のルールを身につけさせなければなりません。
反町
それがなければ、民主主義ではなく、ただのわがままがまかり通る世の中になってしまいます。
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渡辺
“学級崩壊”という現象が取り沙汰されてますが、その根底には、幼児期のしつけができていないことがあると思います。悪いことをしたら、きちんと叱るということがない。かつては両親ができなければ、祖父、祖母がしつけた。しかし、核家族・少子化の社会になり、大事に大事に、その子の思うままに育ててしまう。家族の構造が変わったのであれば、少なくとも学校や地域で社会的ルールを教えなければなりません。また、ルールを踏み外した少年達に対し、日本には世界に誇るべき保護司の制度があります。保護司、民生委員などの制度の拡充が必要です。
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