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特集1
抜本的な税制改革の必要性


--石原都知事による銀行に対する外形標準課税が話題になりました。その反響の大きさは現在の税制に対する国民の意識を示していると思われます。税理士のコンサルティング業務ということでは、民間企業に対してだけでなく、官に対して税制に関する提言を行うという形もあると思われます。そのことで、税理士が果たしている役割についてはどのようにお考えですか?
「大蔵省から税制についての通達が出たとき、税理士会として、その内容に対する見解を出すという制度はこれまであ
りませんでした。また一度出された通達について、税理士会としてはこう考える、このような制度は導入すべきではないといった批判も特にありませんでした。本当であれば、今のような上下関係を壊さないと、健全な税理士制度にできないと思います。その点、アメリカの財務省や国税庁と税理士との関係は日本とは違い、まったく対等な関係です」
--現場を知っている税理士からの提言がもっと出ていいと?
「税理士からも細かい意見は色々と出ています。ただそれをひとつに集約して、


大きな方向性をもたせるまでは、なかなか行きません。
 しかし、それが必要なことは間違いないのです。と言いますのは、今の日本の税制が世界的に見て、歪んだ制度になっているからです。
 そもそも諸外国には法人税そのものがありません。アメリカでもヨーロッパ諸国でも、所得税一本で通して、その中に個人所得税と法人所得税があるという考え方です。日本は個人と法人が完全に分離してしまっています。
 サラリーマンの源泉徴収にも問題があります。3年前、私が東京税理士会で広報部の委員をしていたとき、『源泉徴収と年末調整』をテーマにしたシンポジウムが開催されました。日本では、源泉徴収と年末調整は何の疑問もなくスライドしています。そのことに対するサラリーマンの意識は会社に任せておけば自分が納めている、税金額のことを知らなくていい。年末にどれだけ返ってくるかというだけのものでしょう。諸外国では、自分で確定申告をするという主体的な行動を取


ることで、どれだけ戻ってくるかわかりますから、国に対するギブ・アンド・テイクの関係が明確です。
 さらに重大な問題は、税金の申告には家族についての控除の要件など、本来、会社に知らせてもいけないような個人情報も含まれる可能性があることです。日本のサラリーマンは何の疑問ももっていないようですが、会社の税務担当者はそれをすべて把握する。しかも、法的な意味で守秘義務が課せられていないはずであり、改めて考えてみれば、これは大問題ではないでしょうか」
--日本の税制について抜本的な改革を求めるべきだと?
「税制について根本的に考え方を改めようという意見が、これまで税理士の間からほとんど出なかったことは事実です。そのことの指摘を含め、私は何年か前に、日本税理士会連合会に対して、税制について発想の転換をしようと提言しました。
 まず消費税を完全に廃止する。個人と法人の別を設定せず、ストックの税金とフローの税金に分け、ストックは貸借対照表、フローは損益計算書という簿記の


原則を守る。また収入または付加価値に対して課税する。そうすれば経費についての概念がなくなり、役員報酬や交際費が高過ぎるといった経費にまつわる問題をいっさい考えなくてよくなります。したがって、税法は単純明解なものになり、通達を頻繁に出す必要もなくなります。
 この提案の内容の是非は別としても、21世紀を目前にして抜本的に日本の税制全体を見直す作業が必要な時期にきていることは確かなのです」

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