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特集1
税理士のコンサルティング業務の実態


--税理士法上は、税務の専門家とされる税理士ですが、その業務の中では企業コンサルティングはどのような位置づけにあるのでしょうか?
「私には30年来の持論があります。税理士のみならず公認会計士や弁護士、司法書士もすべてコンサルタントであるということです。自分の事務所をもち、専門知識を活かして、クライアントのために仕事をする存在なのですから、その存在はコンサルタント以外の何者でもありません。士業の本質はコンサルタントであって、それぞれの専門によって枝別れし
ているだけ。そのような捉え方をしています。
 では、これまで税理士は本当にクライアントのために十分なコンサルティング活動をしていたのかと問われれば、残念ながら そのような実態はほとんど無かったと言わざるをえません」
--会社経営者にとって税理士とは、最も大切なお金の部分をさらけ出す専門職で、それだけに信頼関係も深く、何か事が起きれば、真っ先に相談する。そのような位置付けもされていると思いますが?


「事実、税理士の仕事をしていると、中小企業経営者から相談を受ける機会は多いのです。その内容は税務に限らず、実に多岐にわたります。人事管理や退職金などの規定の問題などについて相談を受けたり、従業員の採用面接に立ち会ったり、会社で扱いかねている社員をどうしたらいいかといった相談から、隣家との境界線の問題といった問題まで、法律でいえば、民法、商法、労働法などに関係する様々な相談があります。
 私が問題提起したいのは、そのような中小企業からの質問や指導要請を、税
理士は真正面から受け止めて、果たして適切に処理してきたのかということです。相談を受けて、適切な専門職を紹介するならまだしも、『そのことは分かりません。誰か他の方に聞いてください』と、いわば逃げていた面は無かったのか、ということです。
 そのような税理士の現状を見て、私はICG(International Consultants Group)というグループに参加しました。これはコンサルタントとはどういうものかを学びたい、コンサルタントになりたいという方たちのための全国的な団体です」


--税理士がこれまでコンサルティング業務を積極的に扱ってこなかったとすれば、その理由はどのようなものだと思われますか?
「ひとつは税理士自身、自らの業務を法律業務としてとらえていなかったことがあげられると思います。扱う法律が税法および税に関する法令に限定されてはいるものの、税理士が行っているのが法律業務であることは紛れもない事実です。税理士が法律的なものの考え方に欠けていることに不満をもっています。税理士になる人のほとんどが、大学では商学
部や経営学部を卒業していることに関係しているのかもしれません。最初の2年間で一応法律を学んでいるはずですが、後半の2年間にはどうしてもなおざりになっていますから。」
--司法制度改革で、税理士会は出廷陳述権を要求されていますが、これまで税理士がコンサルティング業務を重視してこなっかったとすれば、ひとつには弁護士法第72条という法律的な足枷があり、法律相談に関われないという意識があったためではないでしょうか?
「出廷陳述権にしても今、要求している


程度のことではとても足りないというのが私の考えです。私が指摘したいのは、出廷陳述を行うにしても、少なくとも実体法である民法や商法、民事訴訟法などについての知識を十分に身につけた上でなければ不可能だということです。法律相談をするにしても、前提として訓練・研修があるべきで、それも税理士会が実施する研修会などに頼るだけではなく、個々の税理士が自分自身で努力する必要があります」

 
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