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カテーテル特許訴訟の逆転劇 米国特許弁護士 服部健一
米国特許弁護士 服部健一

公判の準備
 そしてそうこうしている内に公判の日は刻々と近づき、いやが応でも公判の準備をしなければならなかった。
 裁判所はバージニア州だからベルベスコス達はインディアナ州から飛行機で裁判所の近くのホテルに入ってきた。弁護士の数は御大のエムハルト、そしてベルベスコス、ワーグナー、ズレイタスの4人、そしてそれを支えるパラリーガルが3人それぞれ個室に入り、それ以外にも会議室を3つ確保した。公判までは1週間あり更に公判には3日かかるから、10日間これらの室を確保することになる。バージニア州だからニューヨークのホテルほど高くはないにしても大変な経費である。そしてその上に各弁護士のサービスチャージは1時間に200ドル(当時)はするだろう。
 私と安斎弁護士はバージニアに住んでいるのでホテルには泊まらず、車でホテルへ出かけて彼らの会議に参加する。
ホテルの会議室に着くと、エムハルト、ベルベスコスやワーグナーが段ボール箱の山のそばで話し込んでいた。
「やあやあ、忙しそうだな」
「おう、ケンか。よく来てくれたな」
「モーションの結果は出てないのか?」
「いやまだだ」
「判事はギリギリまで出さないだろう」
「どんな結論を出すだろうか?」
「特許を無効にする確率は非常に高いと見ている」
「何しろ無効にする理由が3つもあるんだからな」
「で、・・・この段ボールの箱の山は何なんだ?」
「公判で用いる我々の証拠さ」
「シールがしてあるな」
「そう、証拠を変えたりさせないためだ」
 陪審員公判に提出する証拠は相手側に全て開示した上で、シールして保管しておく。お互いに公判で用いる証拠を知った上で裁判を行うためだ。そうしないと裁判の効率が悪くなる。公判中にとんでもない証拠が出るのは、ペリー・メイスンの小説の社会の出来事である。公判が始まると判事の前でシールをはがしてその中の証拠を用いることになる。こっそりと新しい証拠を入れさせないためである。




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