ベトナムは、「刷新路線」下において、従来の中央集権的計画化経済から市場経済化への転換を試みている。これに伴い、ベトナム法制の改革も着手されている。一方で、ベトナムにおいて事業を展開している外国企業等から、ベトナムの投資環境上の問題点として「頻繁なルールの変更」が多く指摘されている。つまり、法規の改正である。ならば、ベトナムにおけるどのレベルの法形式の改正であるのか。国会が採択する法律であるのか、国会常務委員会が制定する法令であるのか、政府が制定する議定であるのか、政府の各部が制定する通知であるのか、などの問題が存在する。
本稿では、ベトナム法制を構成する各法形式について明らかにし、各法形式の制定メカニズム上の問題点を指摘したい。
本稿で用いる訳出用語(越語から日本語)については、必要な箇所において、その都度注釈する。基本的な訳出用語については、以下に整理する。
- 「Luat」は、「法律」と訳出する。 Luatは、国会の決議を経て制定される法である。
- 「Phap luat」は、「法規」と訳出する。Phap luatは、国会により制定されLuatのほかに政府や部などの国家機関、地方議会(人民会議)及び地方行政機関(人民委員会)政府や部などの国家機関、地方議会(人民会議)及び地方行政機関(人民委員会)の制定する法規範一般を指す。
- 「Phap lenh」は、「法令」と訳出する。ただし、日本の法令の意とは異なり、国会常務委員会が制定する法である。
また、ベトナムの中央省庁である「Bo」は、「省」と訳さず「部」とする。よって、中央官庁である部の首長は、「大臣」と訳さず、「部長」としている。筆者が「省」と訳出する越語は、地方行政単位である「Tinh」である。
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