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さようなら20世紀(1)
――残り500日のあいだに 株式会社インサイダー代表 高野 孟 氏
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20世紀はまた,戦争の世紀であった.戦争も人類始まって以来,さんざんやってきた
が,にもかかわらずこの世紀がそう呼ばれるのは,レイモン・アロンが言ったように,
それが初めての「全体戦争の世紀」だったからである. 狩猟・採集民族は余りお互いに争うことはせず,農耕民族は土地の領有が生産力の基 盤となるために,そして騎馬民族は略奪で富を増やす以外の方法を持たなかったために, 本格的な戦争を行うようになったが, |
それでも近代以前の戦争は,プロの騎士や武士が, 収穫を終えた畑や野原で一定のルールに基づき(軍旗や敵将の首を取ればおしまい)や っていた.徴兵制による国民軍を最初に組織したのはフランスで(戦争の市民化=民主 化?),革命後,1815年までの25年間に絶え間なく続いた隣国との「ナポレオン戦争」 を通じ,国家と国家が一般国民を巻き込んだ大兵力,工業化を背景とした大火力を動員 してお互いの殲滅を賭けて戦争することが当たり前となった. |
その行き着いた先が第1次世界大戦で,これが人類史上初めての全体戦争――兵士(戦
闘員)だけでなく後背の婦女子を含む市民(非戦闘員)をも無差別に殺すことなしには
勝利はありえない「総力戦」すなわち「皆殺し戦争」となって,少なくとも2000万人が
死んだ.余りの惨状を見て,国際連盟(1920)が生まれパリ不戦条約(1928)が結ばれ
たのも空しく,今度は第2次世界大戦で5500万人が死んだ.その皆殺しのための熱い
戦争の究極の姿がナガサキ・ヒロシマだった. そこでまた反省して国際連合(1945)やそれと理念的に連動する日本国憲法(1946) が生まれたが, |
欧州や日本の壊滅をいいことに覇権を得た米ソは,相変わらず「いざと なれば武力で決着」という野蛮の原理を維持しつつ,しかし全体戦争を発動すれば核を 使うことになって破滅に陥るため,主に第3世界の前近代型の部族・民族・宗教などに よる内乱・革命・国境紛争に介入して勢力圏を競った.核を使えないが故に「冷たい」 と呼ばれただけの,この引き延ばされた第3次世界大戦も,しかし,終わって,別の原 理による世界平和の確保が最大のテーマとなっているが,その点で最後進国は米国で, 2番目がその特別な同盟国=英国で,3番目が米国への盲目の追随者=日本である. |
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