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はじめに
いまなぜ改革が……

いま、わが国の社会は激変のただ中にある。バブルの崩壊後の経済は容易に浮揚せず、リストラによる産業機構の縮小はいまや大失業時代の出現となり、信頼の神話を謳歌した金融制度の惨めな没落は、これを救おうとするゼロ金利政策に支えられながら、なお公的資金に頼り、国民の信用を失い、国民生活の不安の要因をなしている。  そしてこの状況は、進行する少子高齢という、避けることの出来ない社会の地盤変動ともいうべき事象に対応すべき能力を持たないため、困難な立場の人々へのしわ寄せとなってきていることは否定できない。国は、この状況からの脱却のために、可能な限りの手立てを講じている。その目的は、需要の喚起による景気の高揚であり、産業活動の拡大による企業の育成発展と失業者の吸収である。 このような社会の変化は、国民の経済生活に激しく影響することは言をまたない。失業において、企業の育成において、年金において、介護において、われわれ社会保険労務士は、国民がその生活のすべての変化の局面において深く関わっている。好景気の時代の国民生活の変転よりも景気低迷の時代の国民生活の変動はより深刻であり、われわれ社会保険労務士の業務はよりキメ細かく、より人間的に配慮することが求められる。  そして、21世紀、わが国の人口構造から来る若年労働者の減少、その結果としての雇用の大流動、高齢者あるいはパートタイマーの特殊就労形態の増加、、外国人就労者の増大と、わが国における就業慣行の決定的な変貌は、右肩上りの産業構造と共に成立し発展して来た社会保険労務士の


徹底的な意識改革を迫るところである。社会保険労務士制度の改革の真の必要性は、この社会の大変動にこそその原因が存在する。  ときあたかも、国はわが国の諸制度に行われている様々な規制を経済活動の障害であるとし、国の規制改革委員会は、国民の利便に反する制度はすべて排除すべきであるとして、平成10年度から3年間に、いわゆる事務的士業において現在の制度をすべて国民の利便の立場から再点検を行うものとしている。すでに報じられているように、この再点検の結果、まず弁護士による法的サービスが、弁護士法第72条によって包括的に業務独占が認められているにも拘らず、その地域的偏在や依頼のためのアクセスのむずかしさが指摘され、その一部の権限を隣接する他士業へも認めるべきである、と 提言されるに至った。  このことは、関係士業において、その業域拡大の好機という認識もないではないが、これは全く皮相な見方で、それぞれの専門士業は、その業務の専門的知見に基づいて迅速に国民の法的トラブルの解決に当たるべきであり、このためには士業間の垣根を越え国民の利便に奉仕するべきであって、上述の国の規制改革委員会の提言は、このためにすべての関係士業が、国民の負託に応える法的サービスに、どのような位置を占めるべきか、ということの提言に他ならないであろう。われわれ社会保険労務士としても、社会的変動によって迫られている意識の改革の具体的な形として、制度発足以来30余年の蓄積を充分に活かしながら、国民の負託に応える制度の構築を図らなければならない。



 
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