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○第9次雇用対策基本計画にみる「労働力需給調整事業」の位置付け
昨年8月19日、政府は今後10年間の雇用政策の基本的施策として「第9次雇用対策基本計画」を閣議決定した。計画では「官民一体となった労働力需給調整機能の強化」が骨格の一つとなっている。
労使一体となって守られてきた終身雇用制が、国内外の様々な構造改革のあおりを受けて、動揺し始めた。短期型雇用、能力重視の雇用形態は今後ますます拡大していく。求人広告をはじめ職業紹介・労働者派遣からなる労働力需給調整事業を官(公共職業安定所など)と民(労働者派遣事業、民間職業紹介所など)が、適切に役割分担することが必要である。
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○労働者派遣法・職業安定法の改正(1999.12.1施行)
派遣対象業務を原則自由化した改正派遣法、職業紹介の国家独占原則を改め、民間による職業紹介事業に門戸を開いた改正職安法が施行された。これらの法改正は、労働力需給調整システムは官主導から民間主導へと移り変わる契機であるとともに、企業、組合といった組織レベルではなく労働者個人レベルでのきめ細やかな需給調整が求められることになろう。2005年以降は労働力供給が減少すると予測され、産業・経済の最後の砦は個人であることに大いに着目すべきである。
上記に関連し、これまでは労働力需給調整事業と職業能力開発とは別個のものとして捉えられてきたが、今後は様々な要素に左右される労働市場の動向を見極めた上で、一体的に取組む必要がある。
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○大成長・人材ビジネス
人材ビジネスは今や、1兆6千億円の市場規模をもつ。98年度労働者派遣事業報告によれば、派遣労働者数は約90万人、事業所数は約1万7千にのぼる。今年12月1日からは紹介予定派遣(temp to perm)が認められることから、事業ニーズはさらに多様化し、市場は活性化するであろう。
もっとも、ビジネスの大成長の裏側には、派遣元での雇用管理(社会保険・労働保険の加入問題等)、派遣先での就業管理(「同一の業務」(労働者派遣法第40条の2)の解釈、中途解約、セクハラ問題等)をめぐる問題が潜む。これらの解決が、労働法政策上の喫緊の課題であることは言うまでもない。
今回の特集では、派遣ビジネスを中心に労働市場の現状と問題点に迫る。
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