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農林業がもつ多面的な機能と役割

瑞穂の国の知恵(歴史に学ぶことは大切)


 日本が“瑞穂の国”として栄えてきたのは生活の知恵の積み重ねによるものです。
 日本は準亜熱帯地域で、年間降雨量が多い国です。また火山国であり、土質としては水分を含むと土砂崩れを起こしやすい火山灰土が表面を覆っています。地形は山が多く、しかも急峻で、降った雨はすぐに日本海と太平洋に流れ込みます。
 農業生産を放棄した休耕地は、雨水を保水し貯め込むことができず、すぐに土砂崩れを起こす性質があるのです。
土砂が川に流れ込み、川床が上がる。それが水害につながります。川下に住む人は大変なことになるわけです。
 それを防止するためには中山間地の森林農地の適正な維持管理が必要なのです。山に木を植えて、育て山の保水力・貯水力を高めることです。また山間の谷に水田を開くことは、単に水稲を栽培するだけでなく保水し、貯水することなのです。水瓶を維持管理していることにもなるのです。そのことが、自然災害を抑えてきたのです。


 段段畑で農業生産を展開するのは、一見非効率でしかないのですが、それは保水力・貯水力を維持し、土砂を抑制するという役割を担っているのです。農林業者はそれを意識するでもなく永年続けてきました。自分たちのためだけでなく、川下に住む人たちのためにもなることを、 いわば日本人が“習い”として、営々と歴史的に積み上げてきた知恵なのです。そのような知恵と業績が今、忘れられようとしています。
 農林業は単に自らの所得を求めて、経済効率だけを考えたものではないというのはそういう意味です。

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