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カテーテル特許訴訟の逆転劇 米国特許弁護士 服部健一
米国特許弁護士 服部健一

弁護士というもの
「さあ、ケンどうする?」
 熱いコーヒーを飲みながら半分自問するようにベルベスコスがつぶやいた。
「彼の記憶によるとこのまま続けてもほとんどメリットはないようだな。これ以上追及しようはないけれど、発明者5人全員が『知らぬ存ぜぬ』と言い張ったことは大変な材料ではあるな」
「そうだ」
 ベルベスコスがギョロリと目をむいた。
「前にもそう言ってましたけど、その意味は同じですか?」
「陪審員にそれが常識で通ずるかどうかということさ」
「ふーん、なるほど」
 と言ってみたものの安斎弁理士はなんとなく納得できない。
「じゃあ、わざわざグアム島まで来たが3時間で妥協するか」
「われわれが相手に妥協したことを証拠に残せば判事への印象もよくなるからな」
「よし! そうしよう」
 ベルベスコスを先頭にデポルームに戻った。そこには原告側の4人が、どんな理由で延期を言ってくるのか待ち構えていた。
「証人は非常にお疲れの様子ですのでわれわれのデポジションはこれで終了します。中村発明者、わざわざグアム島まできていただいて本当にありがとうございました。ご協力を感謝します」
 ベルベスコスの思いがけない謝辞に、シュナイダー弁護士は一瞬拍子抜けしたようだが、自分の主張通り3時間で終わらせたことには満足しているようだ。大ぶりなジェスチャーを交えて返礼を述べた。もちろん、二人とも本心からではなく、裁判の記録に残しておくための社交辞令というものだ。ひとり、中村発明者だけがこれで訴訟から解放されたという心から安堵の表情を見せていた。
 全員が部屋から出る際に、リンダとすれ違ったのでささやいた。
「今度ワシントンでテニスでもしよう」
「そうね、忘れちゃダメよ」
 リンダが片目をつぶって見せた。再び18時間かけてワシントンへ戻らなければならない苦労はあるが、先の楽しみも出てきた。




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