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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言29】 言われなき「予備校批判」を排するために
29−1 司法制度改革審議会における参考人意見として、司法試験受験予備校からのヒアリングを実施すべきである。
29−2 司法試験予備校においては当然、倫理教育(徳・善・美などの倫理、及び職業倫理)を行わないことを十分認識すべきである。
<理由・解説>
29−1について
 司法制度改革審議会における参考人ヒアリング、法科大学院構想シンポジウム等において、予備校教育批判が繰り広げられている。結論からして、それらはすべて予備校教育の実態を踏まえない抽象的議論であり、大学側の醜い自己正当化に過ぎない。
 予備校教育を受け、司法試験に合格した者が法曹として質が悪いと言いきれるか。大学の法学理論教育が、法曹養成の基礎固めとしてそれほど有益なものか。答えは、否である。
 同じく社会的エリートと評される霞ヶ関の官僚はここ数年、多くのスキャンダルが顕になっているが、法曹三者については、大きな不祥事は発生していない。また、法曹のほとんどは予備校教育によって司法試験合格を果たしているが、質が悪いのだとすれば裁判などとても成り立たないはずである。さらに、質の悪い法曹が誕生するのを排除するために、法務省を中心とした試験制度改革がなされてきたとはいえない。
 司法試験受験生の実態は、司法試験があまりにも難関で、合格者数が少なすぎることに起因する。これが受験界の常識である。合格者が増えれば逆に、予備校の行う実務法律体系に基づいた法的思考能力の養成、問題解決能力の醸成が活きてくる。
 審議会は、中間答申の前に一度、予備校からのヒアリングを実施し、予備校教育に対する正しい認識を持つ必要がある。同時に、それを踏まえた司法試験改革、法科大学院の制度化を進めるべきである。
29−2について
 法曹に対し、倫理観の欠如を指摘する声がある。またその原因が、司法試験予備校による受験一辺倒の教育が人格を歪め、または人格形成を阻害しているとする意見もある。倫理観の高い法曹は、試験で選抜できるか。
 そもそも、倫理は徳・善・美などの倫理(メタ倫理)と実践倫理(職業倫理はこの分野に属する)区別することができる。結論として、メタ倫理・職業倫理ともに、国家試験になじむものではない。
 まず、メタ倫理は個人の思想・良心の領域にかかわる(憲法第19条)。国家は絶対に介入すべきでなく、試験で問うべき事柄ではない。
 職業倫理については、学部段階あるいは法科大学院のカリキュラムの中で素養を培うことが重要であるものの、実務の現場において体得・実践されてはじめて役立つものとなる。
 このように司法試験で出題されえない倫理を、司法試験予備校で教育することはありえない。大学においても同様である。

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