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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言30】 審議会の今後のあり方
30−1 狭義の「司法制度」の議論にとどまることなく、契約の作成・確定段階(裁判前の段階)、契約・判決によって権利を実現する段階(裁判後の段階)についても包括的・体系的に議論を進めるべきである(→論点整理が狭すぎる)。
30−2 審議の一般公開を早期に実現すべきである。
30−3 司法制度改革審議会設置法施行令を改正し、2001年夏の最終答申後も内閣に審議会を置き、司法制度改革の議論を継続すべきである(審議会の常置化)。
<理由・解説>
30−1について
 司法制度改革審議会の所掌するところは、「司法が果たすべき役割を明らか」にし、「国民がより利用しやすい司法制度の実現」を図ることである(設置法第2条第1項)。しかし、この所掌事項に基づいた「論点整理」の項目は、「法律上の争訟」(裁判所法第3条第1項)のみに着眼している。裁判所改革、法曹三者の改革のみ力点が置かれている。
 現在、規制緩和、法と経済の国際的調和が否応無しに進んでいる。わが国の緊急課題は、裁判外の社会現象に隈なく、適切にリーガルサービスを供給するシステムを築き上げることに他ならない。契約を作成し、内容を確定させること、契約をめぐって訴訟を提起すること、国家の助力を得て契約内容を実現することすべてが一連の司法機能に関わるものとして改革の対象と考えるべきである。そのため、審議会の論点整理は、狭義の司法にとらわれ、不十分である。
 本提言では、司法書士など隣接職種の権限拡大、公証人・執行官制度の強化を主張している。司法制度改革懇話会はあくまで、広義の司法制度改革の実現を求めていく。
30−2について
 審議会は今でも非公開とされている。しかし、どの論点についても法曹界に限らず、産業界、大学教育界などかなりの利害関係があることから、審議を公開すべきとの意見は審議会設置前から存在する。
 今後、審議が佳境に入ってくると、国民全体を巻き込む勢いで、意見の対立が出てくることは間違いない。「国民にとってより利用しやすい司法制度の実現」は、国民世論と距離を置いては何ら意味がない。だからこそ、国民に開かれる審議が必要である。また、議事録は後日ホームページにおいて公開されているが、審議の公開と議事録の公開とは異なる。審議は一般公開すべきである。
30−3について
 審議会は2年間の審議期間を予定しているが、論点整理の項目が実に多岐にわたっており、十分な審議が尽くせるかどうか問題が残る(もっとも、各論点に関する様々な見解がすでに出揃っているため、審議には十分余裕があるとの見方もあるが、利害調整にやはり時間がかかる)。
  今度の司法制度改革は2年後に完結するわけではない。司法制度をめぐる環境が変化すれば、その役割も変わらざるを得ない。政治、経済ともに混沌とした状況の下、司法制度改革は永遠の政策テーマである。
 内閣総理大臣の諮問にいつでも即応できるよう、2001年夏以降も常置すべきである。

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