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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言27】 公証人制度の抜本的改革
27−1 予防司法の担い手としての公証人を大幅増員すべきである。そのために、公証人法の規定に基づき、公証人試験を早期に実施すべきである。
27−2 司法書士で一定の実務経験のある者に、公証人資格を付与すべきである。その際、ユーザーアクセスを向上させるため、公証人役場でなく各々の事務所での公証業務を認めるべきである。
<理由・解説>
27−1について

 わが国の公証人制度は1886年にスタートし、古い歴史を持つ。公証人は私法上の権利関係を公的に認証し、法的紛争を未然に防止する予防司法の担い手である。
 契約に基づく当事者の権利内容の確定を行うことにより、紛争は回避されうる。この点、アメリカでは弁護士が、フランスでは公証人が契約を公証し、予防司法の担い手としての役割を果たしている。
  ところがわが国では、契約内容の確定の場面で公証人の機能は弱い。契約内容をめぐる紛争が(本来、法の解釈・適用の場であるはずの)法廷に持ち込まれてしまっている(ひいては、裁判所が当事者の本来的合意とは異なる判決を下した場合、一方当事者が納得せず、執行妨害等の行為に出る原因ともなる。契約の入口での失敗が、出口に至るまで影響する)。わが国の公証人が少なすぎることの結果である。
 公証人は公証人法に基づく国家試験が1度も実施されたことがない(公証人法第13条の2)。試験を実施するかわりに、公証人審査会において退官した裁判官を中心に「特例公証人」を任命している。欠員が発生した場合に補充するという選任方式を採っているため、公証人の数は549名(1998年5月現在)にとどまり、最近10年間でほとんど同数で推移している。
 公証業務への需要は、次の2点を根拠に今後さらに需要が高まるといえる。
 まず、成年後見制度における公証業務である。公証人は、任意後見契約の公正証書作成に関与する(任意後見契約法第5条第1号)。任意後見契約は、本人がまだ十分な意思能力を有している時に予め後見人を選任し、財産の管理・処分、あるいは介護サービス等につき自己決定権に従った内容を実現するシステムである。痴呆性患者は全国で160万人と推計されているが、痴呆になる前に任意後見制度を利用しようとする潜在的利用者がかなりの数にのぼると思われる。
 次に、国家の壁を超えた電子商取引の活発化である。コンピュータでは、法律関係の正確さが公的に認証されたものであるかどうか独自に判断できない。それ故、誤った情報が入力されると、その情報を前提として法律関係が形成され、大きな混乱が発生してしまう。
 このような需要拡大に鑑みると、公証人の数を大幅に増員する必要がある。公証人制度の社会的認知度を高める必要もあり、早急に資格試験を実施すべきである。合格者は当面、毎年1,000人程度とすべきであろう。
 なお、公証人試験の実施、民間企業法務経験者の特認公証人への任用については、規制緩和推進3か年計画(再改定)で盛り込まれている。

27−2について
 司法書士の扱う登記事務(司法書士法第2条第1項)に関連し、現在公証人が行っている登記原因証書の認証は(不動産登記法第35条第1項第2号)、司法書士の権限とする必要がある。フランス、ドイツ、スペインの公証人は登記手続に際して公正証書による公示も行っている。権利変動と権利公示を一名の実務家によって迅速に行うことが当事者のニーズに適う。
 そこで、一定の実務経験を有する司法書士には、公証人資格を付与すべきである。また、利用者側のアクセスを考慮し、公証業務を通常業務と区別することなく、各々の開業事務所で行うことを認めるべきである。

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