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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言25】 政府行政改革推進本部「規制改革委員会」等との連携
25−1 法曹人口の大幅増員、弁護士と隣接法律職種との業際問題など、司法制度の人的基盤に関する重要論点については、審議会における議論の他に、規制改革委員会による「規制緩和推進3か年計画」(2000年3月31日に再改定)に盛り込まれている。双方による今後の施策方針、審議の動向につき国民に分かり易くするため、少なくとも合同の公聴会開催・意見(報告)書提出を行うべきである。
25−2 司法制度改革審議会に結論の確定を委ねている件については(上記3か年計画の他に、1999.12.22の工業所有権審議会答申における、弁理士への特許侵害訴訟における代理権付与に係る論点)、司法制度改革という観点だけでなく、他の審議会の答申内容を踏まえた結論を下すべきである。
<理由・解説>
25−1について
 政府行政改革推進本部規制改革委員会は、1998年2月に発足し、翌月には「規制緩和推進3か年計画」(1998〜2000年度)が閣議決定されている(15分野624事項)。1999年3月には1度目の改定を行い、規制緩和項目数も917事項に拡大された。同年12月には「規制緩和についての第2次見解」を発表し、司法書士・弁理士等への訴訟代理権付与、公証人試験の実施を具体的に盛り込んだ。それを受け、2000年3月には計画が再改定され、2001年3月までの措置完了に目途をつけるとともに、項目数も1,268に大幅に拡大された。
 規制改革委員会は、社会的規制の最小化、事後チェック型社会への転換に相応する司法機能の強化を目指し、法務関係、業務独占資格の見直しを進めている。問題は、1999年7月の司法制度改革審議会設置、12月の論点公開を受けた今回の3か年計画再改定で、法曹人口の大幅増員、司法書士等への訴訟代理権の付与、といった重要論点の結論を審議会の結論に委ねてしまったことにある。2001年3月に規制改革委員会が計画のフォローアップを行う際には、独自に結論を出すべきである。
 そして、司法制度改革審議会も規制改革委員会の計画推進に囚われることなく、制度改革のために妥当な結論を見出すべきである。
 もっとも、法曹人口増員などは、関係士業界を巻き込む極めて関心の高い問題である。そこで、司法制度改革審議会と規制改革委員会が共催する公聴会、シンポジウムを是非実現し、問題認識の共有化を図るべきである。
 また、両会が共同提案の形で、両会の競合論点に関する意見書を内閣総理大臣に提出するなど、前向きな施策推進に取組むべきである。
25−2について
 前提言と関連するが、結論を司法制度改革審議会に委ねると、答申内容がトーンダウンする。その具体例が、工業所有権審議会による「弁理士法の改正等に関する答申」(1999年12月22日)である。
 この答申において、弁理士法の全面改正をともなう、抜本的な弁理士制度改革が盛り込まれた(知的財産取引に係る契約代理業務の追加、知的財産侵害貨物の輸入差止申立代理業務の追加、特許業務法人の開設など)。しかし、特許侵害訴訟等における弁理士の訴訟代理権については、司法の人的インフラに関わる問題であるとして、司法制度改革審議会の議論が必要とされ、今回の答申には加えられなかった。そのことにより、司法制度改革審議会の最終答申後まで弁理士法改正が遅れてしまう。弁理士制度改革の目玉であるはずの訴訟代理権が加えられないとは、答申としてどれほどの意義があるのか。
 知的財産訴訟の迅速強化は、プロパテント政策の基軸である。弁理士への訴訟代理権付与は絶対不可欠である。
 政府レベルの審議会(あるいは委員会)同志で、無意味な互譲はすべきでない。しかし、工業所有権審議会ではもはや結論は出てこないことから、司法制度改革審議会は先の工業所有権審議会答申の趣旨を十分に踏まえた議論を行うべきである。

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