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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言21】 法曹一元
21−1 民主的司法制度の基礎となる「法曹一元制度」は、今後も十分に議論を行い、導入を慎重に決すべきである。
<理由・解説>
21−1について
 裁判官の独立、身分保障(憲法第76条、第78条)は、立憲民主主義の砦として裁判官が活躍するために必要な制度であることは否めない。そのため、最高裁事務総局が中核となった司法官僚制度(キャリアシステム)が形作られてきたのは、ある意味で必然的である。
 ところが他方で、キャリアシステムが裁判官の昇進、転勤を左右する実態があり(裁判官ネットワークによって内実が暴かれている!)、裁判官の職業良心(第76条第3項)をも事実上拘束する弊害が発生している。また、キャリアシステムは裁判所組織内部の狭く、閉ざされた世界での人間関係のみ形成し、若手の判事補の時代から一般社会で多くの人と接し、感性を磨いたり、専門能力を高める機会が実に乏しい。不当判決、高度専門訴訟での訴訟遅延はこうしたことが原因となる。最高裁判事の国民審査制度(第79条第2項)、弾劾裁判制度(第64条)はすでに形骸化している。このような問題を克服するために、法曹一元制度の導入が主張されている。
 法曹一元制度は、裁判官、検察官を弁護士から任用し、その任用に際して民主的な手続を導入する余地がある点で優れていると思われるが、導入までにはまだ議論を尽くすべきである。以下のような疑問点がある。
 まず、法曹一元により裁判官をどのように選任するかである。弁護士会からの推薦とするか、公選制とするか、その他の選任方法を採るか、である。
 また、裁判官への任官拒否にどう対処するかである。法曹一元制度の維持を優先し、本人の意思に反して裁判官任官を強制したとすれば(一部にはそうした見解もあるが)、憲法問題(第19条、第22条第1項)に関わると言わざるを得ない。
 そして、裁判官の選任については多くの議論が出されているが、検察官の選任方法についてはどうすべきか。現在も判検交流が盛んだが、こうしたシステムとどう調和させるべきか、議論を尽くすべきである。

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