19−1 法科大学院の設置につき、特定の大学の権威付けにしかならない認定校制度は採用すべきでなく、原則自由化すべきである。また、各大学で法学部の役割を再構成し、教員、カリキュラム、指導方法を抜本的に改めるべきである。
19−2 法科大学院では、全国で統一された基礎カリキュラムと併せて、各大学の特色を活かした法学教育を実践するものとし、法曹三者だけでなく、多様な専門分野に特化した法律家の養成に努めるべきである。 |
法科大学院構想のほとんどは認定校制度を採用している。全国で20〜30校程度の認定校を設置する案が多い。
大学を管轄する文部省が果たして適切に法科大学院を認定しうるかどうか、まず問題となる。
また、構想を発表する大学自らが認定校制度の導入を主張する説得的な理由が見出しがたい。一部の大学は、これまでの司法試験の合格実績を楯にとる。しかしそれは学部4年間の教育が功を奏したわけでなく、受験予備校の指導の下で学び、合格を果たしたのであるから、大学自身の功績としてPRすることはできないはずである(法学部教育が既に風前の灯と化していることは、多くの法学部教授が自認している)。
法科大学院の設置目的は、法曹の質と量をバランスよく確保し、様々な専門分野に特化した法律家を養成することにある。そのために、法科大学院の設置は原則自由とし、多様化を図らなければならない。
次に、一般的見解ともなっている「日本型ロースクール」であるが、法学部改革が十分に行われない限り、機能しないであろう。法学部を存置することの意義が問われているからである。
法学部の教育は実務界で即戦的に役立つ内容になっていない。講義内容に関心を示さない学生はほとんど講義に出席せず、必修でなければゼミの単位すら取らないという現象が起こっている。学生のゼネラリスト志向、スペシャリスト志向に応えることができる、実利的な講義を中心としたカリキュラムの組立て、教授陣の確保をはじめ、徹底した法学部改革が必要である。 |
法科大学院修了時には、全国一律で司法試験を受験すべきであることはすでに述べた。法科大学院のカリキュラムについては全国一律でなく、各大学で独自案が出されている。大学院設置を原則自由とする立場からも当然の帰結である。
各大学がカリキュラムに工夫を凝らすことにより、多様な専門分野に特化した法曹養成に取組むことには重要な意義がある。しかし他方で、プロフェッショナルとして社会的正義の実現・維持を担おうとする以上、全国で統一した最小限の「基礎カリキュラム」を設定することも検討すべきである。
勿論、カリキュラムは司法試験に見合うものに構成される必要がある。仮にその試験内容が、法曹としての必要最低限の実務能力、プロフェッショナルとしての個別専門能力に分かれるものとすると、各大学院は全国一律の基礎カリキュラムと併せ、院生の希望に添う多様な専門コースを設ける必要がある。 |
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