18−1 法科大学院の制度が始まった後も、現行の司法試験制度は存続させるべきである。
18−2 法科大学院の修了試験と現行の司法試験は一本化すべきものとする。
18−3 企業・官公庁などの予防法務において実務能力を身につけるため、司法修習の中にこれらの研修カリキュラムを設けるべきである。 |
法科大学院による法曹養成制度が現行の司法試験制度に代替し、司法試験の段階的廃止もしくは即廃止を主張する見解がある。これは「点からプロセスへの転換」として、一発試験としての司法試験(点)から法曹としての資質・判断力を(2年ないし3年にわたって)養成するという、プロセス重視の考え方に基づくものである。
しかし、司法試験を廃止し法科大学院のみによる法曹養成制度で一元化することは、「認定校」制度と結びつくことにより、一部の有力大学の権威付けにしかならないのは明白である。認定に漏れた大学では、入学しても法曹資格を得られないことを理由に学生が集まらなくなる。とりわけ私立大学にとっては経営上、死活問題となる。
以下に述べる理由により、現行の司法試験は存続させるべきである。
まず第1に、司法試験は受験資格を厳しく限定していないことから、合格すれば誰でも法曹資格を得られるというメリットを有している。
第2に、法科大学院に在籍する者や卒業生でも受験機会が与えられることから、法曹への道に選択の幅が広がる。
第3に、法科大学院を最終段階とする法曹養成は、期間はあまりにも長すぎる。大学(学部)を卒業し(4年)、法科大学院に進学・卒業し、司法試験に合格し(3年)、修習を終える(1.5年)となると、どんなに早くても27歳でしか法曹になることができない(大学入学後、9年かかる!)。もし、現行の司法試験を存続し、合格者を段階的に2,000人、3,000人と増やせば学部3回生、4回生での合格者(21歳以下の合格者)が格段に増すことは間違いない。20代という、人生で貴重な時期をいたずらに法曹養成教育に費やすことは国家的損失である。 |
現行の司法試験と法科大学院とは、併用して運用されるべきである。
この点、ある法科大学院構想には、法科大学院の修了試験をいわゆる新・司法試験と位置付け、8割以上の合格者を確保しようとするものがあるが妥当ではない。なぜなら、現行の司法試験と法科大学院とが併用されるとしても、同じ法曹養成のためのシステムには変わりがないのであるから、試験内容、難易度に隔たりがあっては
ならない。 |
司法修習(裁判所法第66条)については近時、期間短縮(1年6か月)が図られるなど、見直しが図られている。「法を扱う技術」の体得は司法研修所に限られたものでない。裁判官・検察官へ任官した後も改めて実務研修が行われているし、弁護士についても勤務弁護士(イソ弁)となることで、さらに実践経験が積めることから、期間短縮については問題はないと考える。
問題は修習内容であるが、法律家として「法律上の争訟」(裁判所法第3条第1項)に係る実務能力を体得するだけでなく、予防司法の分野(企業法務、行政法務など)でも実務経験を積むことが必要である。なぜなら、弁護士法第30条を改正し、企業内弁護士を増員する制度的工夫をしたとしても、実務を理解し、遂行する能力がなければ法律家としての存在意義がないからである。 |
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