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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言12】 新たな時代に対応し得る捜査・公判手続
12−1 情報通信システムの専門家を多く登用し、ネット犯罪に対する予防捜査に万全を期すべきである。
12−2 刑事司法制度の清廉さを害しない程度で司法取引制度を導入し、捜査の迅速化に努めるべきである。
12−3 少年審判に関する情報公開を推進すべきである。
<理由・解説>
12−1について
 近時の犯罪動向の特徴は、組織化、凶悪化、複雑化、低年齢化、国際化である。特に、わが国の精神風土の荒廃と社会制度の疲労を象徴するかのように、信じられないような重大・凶悪犯罪が繰り返し発生している。少年凶悪事件もさることながら、今後増加の危険が高いのが、ネット犯罪である。電子政府化と電子取引化が官・民双方で進められている。ネット上には様々な法益が存在することに鑑み、ハッカーによる侵入の予防、ハッカーを確実に特定しうる予防捜査システムを速やかに構築すべきである。
12−2について
 企業ぐるみの犯罪、またはオウム真理教のような宗教団体による犯罪など組織犯罪については、組織の末端から捜査を開始することも一つの方法である。しかし組織犯罪の解明には多大なる時間と経費がかかることから、構成員の内部告発を端緒とする捜査が実体的真実発見に効果がある。告発者に対する刑罰免除・減刑を内容とする司法取引制度を導入すべきである。もっとも、犯罪者に対する厳格な刑罰適用も刑事司法制度の根幹であるがゆえ、司法取引制度が認められる要件を法律上明らかにする必要がある。
12−3について
 少年審判制度の問題点が浮き彫りになっている。被害者の家族に対しては少年の氏名すら通知されない。唯一、損害賠償請求訴訟を提起する際、審判記録を参考資料として家庭裁判所に請求して初めて少年にまつわる様々な事実を知るというシステムでしかない。被害者の家族感情に配慮するという視点だけでなく、どうすれば少年審判制度に対する国民的信頼が維持されうるかという観点で、情報の公開を進めるべきである。

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