【提言11】 司法の行政に対するチェック機能の充実 |
11−1 司法権の本来目的である法の支配の確立、立憲民主主義の維持、発展のため、裁判所は違憲立法審査権(憲法第81条)を積極的に行使し、さらには合目的的法解釈による資源配分を通じた政策形成機能を営むべきである。
11−2 各種行政訴訟における処分性要件、原告適格要件を緩和し国民に利用しやすい訴訟制度とするための行政事件訴訟法の改正を行うべきである。 |
わが国の司法制度が「2割司法」と揶揄される事態に陥っている。それは裁判所が戦後半世紀以上にわたって、憲法判断を徹底的に回避し、行政へのチェック機能を果たさず、国民(特にminorityの階層)の権利侵害状態、不平等を救済してこなかった怠慢の結果である。
まずキャリア裁判官制度は、裁判官の違憲審査権行使を阻む最大の心理的要因である。法曹一元制度の導入を図るなどして、キャリアシステムを打破する必要がある。
さらに、司法の未来像という観点では、旧来の消極的意義の司法権から脱却し、法の合目的的解釈による権利の初期設定、資源の配分を行うなど、政策形成機能を備える必要がある。司法の役割が量的に増大し、質的に深化している実態を直視しなければならない(積極的意味の「司法権」概念を確立、定着させる必要がある)。 |
裁判所による実効的な行政チェックがなされない場合、最後は国民自身によって行政訴訟を提起し、権利回復を図らなければならない。行政訴訟の手続を定めたのが行政事件訴訟法であるが、国民には利用しにくい制度となっている。まず、提訴の約2割が訴訟要件の問題で不適法却下されている。さらに、当事者間で証拠偏在が著しく、指定代理人制度がとられているため訴訟追行能力に大きな違いがある。その結果、審理が甚だしく長期化し、迅速な権利救済が実現することはほとんどない。
行政事件訴訟法は抜本的な改正が必要である。訴訟要件の緩和、審理迅速化のための公判手続見直し等、改正を行うべきである。 |
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