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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言10】 民事執行制度の在り方
10−1 執行官の大幅増員を図るべきである。
10−2 民事執行法を改正し、債権者に差押財産の継続調査権を付与すべきである。
10−3 担保権の設定から執行手続に至るまで実務に深く関与する司法書士に、民事執行事件における代理権を付与すると共に、上述の差押財産継続調査権の代理権も認めるべきである。
<理由・解説>
10−1について
 民事執行事件は、地裁において年間8万件程度の新規申立がある。債権内容の実現を図る意味で執行手続は極めて重要であるが、それを担うべき執行官が全国で600人程度しかいない。
 そのため、執行官による現況調査が不十分なまま競売手続に入ったり、その後の引渡に執行官が立会わないこともある。抵当不動産への居座りなど、競売決定が何ら意味をなさない事態が発生している。「法の支配」を貫徹するには、執行段階で裁判所が確固たる権限を行使することが必要である。
 執行官は、地裁が選任権限を持ち、書記官より多く登用されている(執行官規則第1条、第2条)。しかし、その試験(現状は選考採用)方法については一般に明らかにされておらず、公正さの点で問題が多い。そこで、公証人と同様、試験による任用を検討し、大幅増員を図るべきである。
10−2について
 現在、民事執行制度に対するユーザーの信頼が著しく低下している。いわゆる「財産隠し」が横行し、最近特に手段が陰湿になっていることから、債権者が執行判決を得たとしても、泣き寝入りせざるを得ないのが現状である。また、債権者が差押さえた財産がその後どうなったか(所在や価値評価も含めて)継続して調査する権限がないので、必然的に勝訴判決の実効性が薄れてしまうのである。
 そこで、債権者には裁判所を介した形での、差押財産継続調査権を与えるべきである。
10−3について
 司法書士は、抵当権設定登記の申請に始まり、民事執行の申立書作成、代金決裁場面の立会い、さらには所有権設定登記の申請手続と、民事執行手続に深く関与している。そこで、執行手続の一括委任という債権者の利便性を考え、抵当権など担保権の実行である競売申立事件の代理権を司法書士に認めることが妥当である。
 さらに、司法書士には上述の差押財産継続調査権の代理権を与え、この分野における法律専門家と位置付けることで、債権担保制度の信頼回復、向上を図るべきである。

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