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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言9】 専門的知見を要する事件への対応
9−1 下級裁判所における専門部を全国の高裁所在地に設置すべきである。
9−2 知的財産裁判所、税務裁判所、労働裁判所などの専門裁判所を全国に設置すべきである。
9−3 下級裁判所専門部、専門裁判所で訴訟を担当させるため、専門裁判官制度を創設すべきである。
<理由・解説>
9−1について
 法律学以外に専門知識を備えているとは一概に言えない裁判官は、知的財産訴訟、医療過誤訴訟など高度の専門的知見を要する事件にあたって、争点整理と主張事実の解釈、心証形成に大変な労力が要求される。それは、重大な事実誤認を生み出す原因でもある。最高裁を頂点とする一元的な司法システムを前提とするならば、当面の間はこれらの分野について専門部を設置し、迅速かつ正確な司法判断を求めていくことが望ましい。
 東京地裁には知的財産専門部が3部設置されている(現在は3部)。医療過誤訴訟、税務訴訟についても同様、少なくとも高裁所在地には、専門部を設置すべきである。
9−2について
 プロパテント(特許重視)政策の一環として、アメリカは連邦巡回控訴裁判所(CAFC)を設置し、膨大な訴訟を速やかに解決することを通じて、特許権の保護強化が図っている。審理の迅速化は国民の司法に対する信頼を確保するための必須要件であることに鑑みると、わが国でも専門特化した裁判所を設置し、争訟解決の期待に応えていくことも検討に値する。知的財産、税務、労働の各分野でまず専門裁判所を設置し、将来は分野を広げていくことが必要であろう。
9−3について
 9−1、9−2の提言に関連し、人的側面でのインフラ充実を図る目的で、特定分野の訴訟のみを取扱う専門裁判官制度を導入すべきである。それは後述する法曹制度改革にもつながるが、司法試験合格者以外にも法曹資格の門戸を広げること、法科大学院において法学部以外の他学部出身者(工学部、医学部など)の修学を容易にするような制度改革が求められている。

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