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通巻 194号

<司法制度改革懇話会>
【提言5】 裁判手続外の紛争解決(ADR)の在り方
5−1 ADR基本法を制定し、ADRの目的、紛争処理機関の法的位置付け、既存の裁判システムとの関係、などを明らかにすべきである。
5−2 ADRの利用促進を図るための情報提供を行うべきである。
<理由・解説>
5−1について
 裁判手続外の紛争解決制度(ADR:alternative dispute resolution)は、通常の訴訟手続の代替手段として、より低廉で迅速な紛争解決を行うものである。最近各分野で立上げが盛んである。98年に日弁連と弁理士会が設置した「工業所有権仲裁センター」、住宅品質確保促進法に基づく「指定住宅紛争処理機関」などがある。
 しかしながら、ADRのもつメリットが強調されるものの、すべて個別分野対応型であり、ADR制度の目的、既存の裁判システムとの関係(別訴は可能か?)、処理機関の位置付けと弁護士法第72条の関係、などの基本的事項を明らかにした法律が存在しない。司法制度の中にどう位置付けるか、明確にすべきである。
 紛争解決の迅速化・低廉化と紛争解決に係る法的安定性の確保とはトレードオフの関係ではなく、両者を同時に確保する方向で制度改革を論じる必要がある。また、ADRはもともと国際法レベルのソフト・ローの分野でなじむものであり、既存の裁判システムとの関係でその法的関係を統一ルールとして明確に位置付けておく必要がある。
5−2について
 前提言に従い、ADR基本法制定が前提であるが、市民・企業によるADR利用促進を図る必要がある。
 例えば、「工業所有権仲裁センター」では98年度の1年間で申立件数がわずか4件しかない。先行技術調査が功を奏し、仲裁、訴訟まで至らなかったという考え方もありうるが、紛争処理機関として設置し、運営を開始した以上、ある程度の利用者がないのは告知が不十分であるからである。
 インターネット、ポスター、パンフレット等を利用した情報提供(問い合わせ先、必要経費等)を積極的に行うべきである。

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