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食料事情 |
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姜日天(朝鮮大学校政治経済学部助教授) |
ここ数年、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)の食料難が問題となっている。その実態はどのようなものか。下の表はDPRK、FAO(国際食糧機関)とWFP(世界食糧計画)、韓国統一院(現統一部)、KREI(韓国農村経済研究院)による推計である。
これで見る限り、食糧供給は需要のほぼ半分でしかない。食料危機の場合、直接的な死因として最も多いのは栄養不良状態で広がる疫病の感染によるものだ。開発経済学の常識からすれば、DPRKの状況は人口が500万人減少していてもおかしくないという考え方もできる。韓国に亡命した黄氏は350万人とされているが、それほど多いとは思えない。 |
このような危機を迎えたとき、セーフティネットを貫徹できる国家体制であることが、常識的に考えうる大量の餓死者を出す事態に至っていない理由ではないかと考える。
逆にDPRKの公表値を韓国統一部は援助を引き出すための過大のものとしているが、数値は信頼できると思う。 私は何度もDPRKを訪れているが、現地を見る限り、96年が最も厳しい事態であった。地方を回わられた方の話を聞いても、当時、非常に苦しい状況にあったことは間違いない。ただ様々な情報を総合すると、97年から98年にかけて食料事情の逼迫はだいぶ緩和されつつあると思われる。 |
(1995/96〜97/98年度) |
注:年度は、11月から翌月の10月まで |
1.推定生産量もしくは調達可能量 2.国連人道問題局が1995年9月12日に公表した「DPRKの水害に関する国連調査報告書」による 3.下段の349万トンは、DPRK水害対策委員会スポークスマン 4.1996年5月発表 5.KOTRA発表 6.韓国農村経済研究院 7.上段は1997年12月発表、下段は1998年6月25日発表 8.1998年11月24日、新華社が共和国の新聞報道として伝える 9.1998年11月12日発表 |
食料難の原因としては、まず旱魃、水害等の自然災害が挙げられる。しかし農業政策の執行における変差・偏向があったことも指摘せざるをえない。
海外には主体農法に問題があったという意見があるが、それには誤りがある。そもそも主体農法とは適地・適作というフレキシブルな考え方を基本としているのだ。 70年代、主体農法の理念に基づいて、ある地方でトウモロコシを栽培する過程をつぶさに観察した『主体農法の具現』という研究書が出版され、それがバイブルのようになった。土地が疲弊していない間は、米と比較すれば収穫量が多いこともあり、特定の地域の研究と成功の過程が普遍化され、 |
トウモロコシを植えることが主体農法であると誤解された面がある。
もちろん現在ではそのことに関する自覚も生れており、長い間、農民が培った経験の蓄積を生かして、その土地の性質・気候風土に応じた農法を導入するという本来の主体農法に戻りつつある。 食料支援については、日本のNGOの方々が人道援助として一生懸命に努力されていることは非常に感謝しているし、励まされる。ただ日本国政府の対応を見ると、政治の道具にしている感を受ける。人道的な性格である緊急支援と対抗措置や制裁の議論とを結びつけることは問題を歪曲させるものといわざるをえない。 |
経済規模と回復の財源 |
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