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カテーテル特許訴訟の逆転劇 米国特許弁護士 服部健一
米国特許弁護士 服部健一

日米裁判事情
私のオフィスにヤマザキ ・メディカル社のすべての書類が段ボール箱で15箱も届いたが、本来は私がすべて目を通さねばならないが、訴訟をいくつも抱えている私にはとてもその時間はない。 だが、私のオフィスには、私と同じように元日本の特許庁の審査官だった木梨弁護士、岸本弁護士がいる。彼らに加えて黒瀬弁理士にも手伝ってもらうことにした。


このようなエキスパートが揃っていることがわがオフィスの強みだ。他のアメリカの法律事務所であったら翻訳者か誰かにとりあえず検討させるところだが、特許のプロでないから重要書類の見落としも多いだろう。それにしてもすべての書類に目を通し、重要と思われる書類には付箋をつけ、コピー会社にコピーを取らせるまでにゆうに1週間はかかり、これだけの弁護士、弁理士を動員すると1時間300ドルとして1日8時間、1週間分をざっと計算しても約200万円になろう。その上、抽出した重要だと思われる書類約1500枚をこれからじっくり精査していかなければならないのだ。 しかも、これらの書類はデポジション対象の社員ごとにわけておかなければならない。原則としてその社員の名前や印鑑が押してあった書類は、彼に関する重要書類となるのだ。社員1人につき、数百枚に絞ったところで意訳してベルベスコスたちと相談することになるが、それまでにさらにまた200万円から300万円はかかるだろう。日本の訴訟では訴訟に関係するすべての書類を提出する義務はないから、調達すべき書面の数が少ないので、これほどの費用はかからないだろうが、ここアメリカでは違う。アメリカの訴訟費用が高いわけである。


 こうして、デポジション対策者別の日本語目次そして英語の抄訳のファイルができたのでベルベスコスに連絡する。
「やあ、スベロ(ベルベスコス)か?こちらはケンだ。ファイルのすべてが揃ったから打ち合わせをしよう」
「OK、じゃ、悪いがインディアナポリスまで来てくれないか。こっちはウィルソン社の書類作成やデポジション対策で動きが取れないくらいだ」
こういうデポジションは当然ヤマザキ ・メディカル社のシュナイダー弁護士たちもウィルソン社の社員に対して準備を進めているところだ。ただし、このデポジションは英語でできる分、作業はずっと楽なはずであるが。
「わかった。木梨弁護士と行くことになるだろう。明日はそちらへ行く」
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