キャリコン資格の活かし方〜独立の体験談〜
こちらの記事では、私が一主婦として3人の子育てをしながらコーチ・講師・キャリアコンサルタントとして独立した際にどのような経験を積み、どうやって人脈を築き、どのような行動をしてきたのか、体験談をもとに、「キャリコンがフリーランスとして活躍するためのヒント」をご紹介していきます。
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- 目次
フリーランスのメリットとデメリット
メリット・デメリットは「人の価値観」によりますが、筆者が個人として直面したメリット・デメリットを紹介します。ご自身の価値観に照らし合わせて考えてみてください。
1 フリーランスになるまで〜仕事と子育ての両立〜
私は、子育て期間中に、飲食関連のパートタイムや教育教材開拓営業等を業務委託で経験し、その後、フリーランス講師・コンサルタントとして独立しました。きっかけは、女性起業家の皆さんとの出会いでした。自身の得意分野を活かし、目標を掲げ事業を営んでいる姿がとても生き生きと楽しそうに感じられ、私も彼女たちのような生き方をしたいと思いました。私自身の人生をどう生きたいのか、何を実現したいのか、個人の自己実現に励みたい。一方で、一家の主婦、3人の子どもの母親でもあり、母親としての責任を全うしたい。その立場で一番大事にしたかったことは「子どもに関することを優先的に考え、時間を自由に使える働き方」でした。
企業勤めであれば、月収の確保や福利厚生、保険等の保障がありますが、時間の制約があります。我が子が通う学校では保護者会や授業参観には参加できない方も多くいらっしゃいました。残業となると帰宅時間が遅くなります。子どもだけで留守番する、保育園や学童に預けることにジレンマを感じる保護者の声を聞くことがありました。私はそもそも専業主婦で子育てを始めたこともあり、学校行事や授業参観、PTA役員、子どものスポーツチームへの参加など子どもに関わることを優先的に考えたく、会社勤めという選択肢はありませんでした。
2 フリーランスになってから〜営業活動は自分自身で〜
フリーランスは時間が自由ではありますが、仕事は自分で獲得しなければなりません。営業活動を自身で行う必要があります。営業活動と聞くと抵抗を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、研修やセミナー講師、キャリアコンサルタントの募集案件を探し、自分で応募していくプロセスを指します。
業務委託契約の場合、1案件ごとに報酬が決められ、年間で仕事が保障されているわけではなく、業務量と収入が不安定です。新入社員研修の場合、主に4月が中心、秋入社の企業では10月に業務が集中します。採用活動・就活支援は 大学生・院生支援として、3年生の就職活動準備期間の7月〜3月に就職支援セミナーと面談、4年生では就職活動本番の3月〜8月に主に面談業務が発生します。
行政関連のハローワーク等の就職支援機関では、半年もしくは1年の契約が多く、更新が保障されていないケースが多いです。そのため、契約先が一本ですと収入が途切れる危険性が生じます。
3 自身にとってのメリット・デメリットはよく考えて
私のように、「時間を優先的」に考える働き方として、家庭を含めたプライベートに重きを置くのであれば、スケジューリングは大変ですが比較的自分都合で予定を組むことができます。自身が望むワークライフバランスは実現しやすいのかもしれません。
他方、デメリットとして、前述のとおり、次の仕事があるのか(契約更新できるのか)という不安との葛藤や収入面の不安定さがあります。
ご自身がキャリアコンサルタントとして「何を実現したいのか」を明確にすることで、キャリアコンサルタントとして働く「自身のキャリアアンカー」が明確になり、どのような働き方をしたいのか意思決定できると思います。
体験談:独立するための具体的なアクション
キャリアコンサルタント資格を取得し独立・起業することは、誰でも挑戦できることだと思います。ただし、独立・起業した後にキャリアコンサルタントとして生計を立て、仕事を得る・得続けていくことは簡単ではありません。
先に述べたように、私が独立を決意したきっかけとなった女性起業家の皆様に、「どうやったら社長になれるのか?」とお伺いしたところ、数名の方からこのような言葉をいただきました。
「あなた自身を律しなさい」
「あなたのファンがあなたの自己実現を手助けしてくれる。多くのファンに支えてもらえるような人柄が大事」
具体的にどうしたら良いのかわからなかったので、言われたことに素直に従いました。まず、自分を律するためにセルフコーチングを学ぶことを勧められたため、さっそく通い始めました。
まずは自分自身を内省することから始め、未来の自分を創造すること、未来の『目指す自分』を実現するための行動を考える、という手順で自身のキャリアについて思案しました。コーチからは、「思った、考えただけでは、実現しない。思ったこと、考えたことを実行すること。インプットしたことをアウトプットすること。」と教わりました。
インプットしたことを即アウトプットするために、習ったことを我が子に伝え、さらに近隣のお母さん友達に向けた講座を自主開催し、習ったことをアウトプットするようになりました。
3年ほど続けると、少しずつ変化が見えてきました。
毎月実施していた自宅でのコーチング講座は参加者が増え、近隣の公民館を借りて実施するようになりました。評判が広まり、地元の小中学校の家庭教育学級での講座依頼、さらに他の市教育委員会からもオファーをいただきました。この時、初めて報酬を頂き、嬉しかったことを覚えています。ほかに、自分を磨くための「上品さ体得演習(敬語の体験学習、テーブルマナー講習等)」も受講し、例えば敬語は、自身はもちろん、子供たちも自然と覚えていきました。また、本を読む習慣をつけることで、多くの言語表現や語彙を学ぶことができました。この時の学びは現在の講師業やカウンセリングに役に立っています。
キャリアコンサルタントとしてのキャリア形成ステップ
キャリアコンサルタントが活躍する場所が様々ある中で、「誰に対して、どのような支援をしたいのか」を見出すことが、最初の一歩です。これらを明確にするためには、まず自分を知ることが大事です。以降、キャリアコンサルタントとしてキャリア形成をするためのステップを解説します。
1 自分を知る
自分を知るために、次の3つの観点を明確にしましょう。
誰の支援をしたいのか
対象者には求職者、企業内で働く人、障がい者、働きづらさを感じている人など様々です。また属性別であれば、学生、若年者、ミドル層、シニア層、女性などもあります。ご自身がキャリアコンサルタントを目指すきっかけとなった出来事を思い出してみるとよいかもしれません。
何ができるのか
キャリアコンサルタント養成講座で様々な技法や知識を学んできたと思います。その後、自分なりに努力して研鑽してきた技能・知識はなんでしょうか。またはどのような技能・知識を活かして対象者を支援したいと思いますか。明確にしておきましょう。
どのような働き方をしたいのか
働き方には様々あります。
・社員や非常勤として固定勤務を希望する
・業務委託契約で日ごと様々な業務を担当する
・月曜から金曜までの連続した勤務が良い
・平日にプライベート時間を設ける働き方を希望する
自分が置かれている環境や状況を踏まえ、どのような働き方であれば充実させることができるのか考えてみましょう。加えて考えたいことは、中長期視点のキャリアビジョンです。例えば、現在は小さな子どもがいて、家庭を中心とした働き方を希望されるのかもしれませんが、子どもはいつか大人になり親の手を離れます。子どもの世話がなくなった際に、どのような働き方をしたいのかについても考えておきたいですね。働き方の移行には時間を要することもありますので、今からその時の為に地道に準備しておくことも大事です。
私が出会った起業家の皆様は「あなたが欲しい人生を手に入れるためには準備が必要ですよ。」とおっしゃっています。その起業家の皆様も、一朝一夕で今の自分が実現できたのではなく、なりたい自分をイメージしてその実現のために地道に準備してこられたのだと思います。
2 体験談:情報を得る / 人脈形成
私が出会った起業家の皆様は、「人とのつながりを大事にしなさい。あなたとつながってくれている方々のおかげ様であなたは成功する。」と教えてくださいました。
「人とのつながりを大事にしなさい。」という言葉に従い、人材業界の同僚が声を掛けくれた勉強会や交流会には必ず参加していました。また、「あなたのことを思って言ってくれていることを素直に受け取る」ことも教えていただきました。お誘いは、スケジュールをやりくりし、すべて参加するようにしました。HR業界関連の方に留まらず、他業界の方々とも面識を持つようになりました。様々な方との出会いは、後に全国の仕事を生み出す人脈となっています。
声をかけてもらったことは断らない、成功者が教えてくれたことは実践する過程で、キャリアコンサルタントだけでなく、企業の人事・人材開発担当、企業経営者、士業の方など、HRに関心をもつ方々とご縁をいただき全国にネットワークが広がりました。
3 行動する
なかなか思うように実現しない、と悩む方の中には、「思った、考えた」だけに留まり、行動しない方がいます。教えていただいたことに対して「本当にそうなの?」と疑いを持つのかわかりませんが、その人がそれを実行して成功できたことを素直に受け止め、自分も試してみると良いと思うのです。確かな事でないと動けない方もいますが、初めから「これをすれば正解、成功します」ということが分かっていたら、世の中の皆が成功者になっていると思いませんか。何が正解か分からない中でトライ&エラーを繰り返し、PDCAを回し続け、より効果的な方法を見出し行動する過程において、多様な人とのつながりもできるのだと思います。
私がアクションするときに大事にしていることがあります。
気になったらやってみる
クランボルツの『計画された偶発性理論』にありますが、「キャリアは用意周到、綿密に計画し準備できるものとは思ってはいけない。むしろ偶発的にいつかやってくるかもしれない絶好のチャンスを見逃さないように、常にそれが起きたときの為に準備し、心を広く開いておかなければならない。」
チャンスの女神は後ろと横の髪の毛は無く、前髪のみ。そのチャンスの女神が通り過ぎる時に気づいてもつかめない、向こうからやってくるときに正面からつかむことしかできない、ということです。チャンスというのは日常的に通り過ぎているのだと思います。つかむ前にチャンスかどうかを考えても、考えているうちにチャンスは通り過ぎてしまいます。チャンスかどうかわからなくても、気になるなら掴んでみるのは大事なことだと思います。
他にも、声をかけてもらったら断らない、依頼は断らない、依頼には120%で応える、自分のことを思ってお声掛けくださったことを有難く感謝する、という気持ちを忘れないようにしたいですね。期待をしていただきお声をかけてくださったことに対する感謝の気持ちを結果でお返ししたいと思っています。相手の期待に応えるのはもちろんですが、相手の期待を超える結果を出すことで、相手にとって感動レベルの仕事ができるのだと思います。期待以上の感動レベルの結果を出すことが、次なる仕事につながります。
業界で活躍し続けるためのヒント
国家資格キャリアコンサルタント資格を取得しても、すぐには希望の業務に就けないかもしれません。専門家というのは、資格を有していることと同時に「実務ができる」ことが求められます。もし、ご自身がキャリアチェンジをしてキャリアコンサルタントとして活動しようと思ったとき、専門家としての実務経験不足が課題となります。
では、どこで経験を積めばよいのでしょうか。筆者の体験をご紹介します。
1 アウトプットでスキルを定着
私がコーチングを学んだ直後に自主開催したコーチングセミナーでは、参加費用はいただきませんでした。目的が、インプットしたことをアウトプットしてスキルを高めることだったためです
研修講師として活躍したいと思っても、経験がなければ講師登録が難しい場合が大半です。どうやったら研修講師として業務ができるのか、尊敬していた先生に相談したところ、先生が登壇される研修のアシスタントとしてお声かけいただきました。しかし、こちらの業務も無報酬で、交通費も自費でした。報酬こそありませんでしたが、先生のアシスタント、サブとして研修に携わらせていただいた経験を実績とすることができました。同時に、活躍している研修講師のスキル・知識を学ぶ機会になりました。専門家として活躍するための貴重な下積み経験でした。
2 キャリアコンサルタントとしての自己研鑽
養成講座で学んだカウンセリングスキルを磨くために、様々な研鑚手段があると思います。例えば、傾聴ボランティアに参加することも良いでしょう。所属している協会があれば、そちらで実施されるスキル研修や事例検討会に参加したり、SNSなどでキャリアコンサルタントを対象とした研鑽会を探して参加するのも良いと思います。
カウンセリング業務に携わっている方は、同僚との事例検討会やスキルアップ研修等があれば積極的に参加する、自身が担当したケースで不安があるのであれば先輩カウンセラーに意見を聞く、スーパービジョンを受けるのも良いですね。
研修講師のスキルアップでは、サブ講師、アシスタントに入ることでメイン講師の技術や知識を吸収することができます。私は研修講師、キャリコンとして独立し20年超になりますが、長くなればなるほど今あるスキルでは限界が生じてきます。個人・企業のクライエントの要望や期待以上に応えるために、スキル・知識をアップデートしていく必要があります。現在でも年間に何度かはサブ講師としてメイン講師のノウハウを吸収していますし、年間20〜30時間ほどは研修等に参加しインプット学習時間として費やしています。
その他、国家資格キャリアコンサルタント資格の延長線として、キャリアコンサルティング技能検定2級・1級があります。キャリアコンサルタントとして、専門家としての技能を磨く過程において、自身のスキルチェックの意味でも技能士にチャレンジしてみるのも良いのではないかと思います。
国家資格キャリアコンサルタントは人数が多いため差別化が難しく、技能士資格をお持ちの方のほうが技能面で高く評価されます。キャリアコンサルタントとして継続的に業務を依頼してもらい、仕事を続けていくためには、他のキャリアコンサルタントとの差別化を図ることも大切かもしれません。
自己実現・自分にとっての成功を手に入れるために大事なこと
学んだことは実行に移す(行動する)ことが、自己実現に向けてとても重要であることを改めてお伝えしたいと思います。また、自己実現のための行動計画をご案内いたしましたが、「分かっているけど…時間がない」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。一日、一週間、一か月、一年を振り返って時間の使い方を見直してみてください。
「重要度と緊急度」の軸で二項対立を作ると「A重要×緊急」「B重要×緊急でない」「C重要でない×緊急」「D重要でない×緊急でない」の4象限ができます。ご自身の仕事とプライベートを含めた全時間をこの4象限に当てはめたときに、「B重要×緊急でない」事柄はなおざりになりやすいため、意識的に時間をつくって取り組むことをお勧めします。時間がないから取り組めなかったと後回しにしていると、いつの間にか「A重要×緊急」になってしまい、Aが多くなりすぎると出来ないことも出てきます。「B重要×緊急でない」事柄には意識的に時間をつくりたいですね。一日は24時間、限りある時間を有効的に活用するためには、「C重要でない×緊急」「D重要でない×緊急でない」事柄を整理して取捨選択することで、「B重要×緊急でない」事柄に時間を使うことができるのではないでしょうか。
時間がなくて自己実現のための計画が進まないという方は、上記を参考にご検討くださいね。
まとめ
キャリコン資格の活かし方〜具体的なアクション〜についてお話してきました。今一度自分に訊いてみてください。【わたしはキャリアコンサルタントとして活躍できる人材になりたいのか?】本気であれば実行・実現できると思います。
筆者は独立して今年で22年目になりますが、おかげさまで2021年9月に法人化し、現在では自身がプレーヤーとして活躍することと並行して、個人・法人とパートナー契約を結びお仕事を依頼できるようになりました。私自身、キャリアコンサルタントとして今後も求職者や企業で働く人々を支援していきたいという思いは変わりませんが、50代になり周囲からの期待が後世の育成にシフトしつつあり、ここ4〜5年は研修ファシリテーターやキャリアコンサルタントの育成業務依頼が増えています。
皆さんがキャリアコンサルタントとして5年、10年、15年先をどのように活躍したいのかをイメージするにあたりご参考になれば幸いです。
筆者
・1級キャリアコンサルティング技能士
・国家資格キャリアコンサルタント
・Disc?認定トレーナー
・ジョブ・カード作成アドバイザー
・学校法人電子学園 日本電子専門学校 非常勤講師
学卒後、野村證券株式会社入社、窓口営業に従事。退職後、家事育児に専念し、教育教材拡売営業、税理士アシスタント、サービス業など様々な業務を経験。
2002年にコーチングを学び講師として独立。労働局再就職支援のほか、2008年埼玉県初女性再就職支援事業における個別面談、就職支援講座を担当。2012年より専門学校非常勤講師として就任、並行して人材紹介会社にて個人面談、模擬面接官を担当。
近年では、主に企業研修、採用面接、研修コンテンツ企画制作等、企業キャリア支援のほか、学生から社会人まで幅広い層における就職支援、キャリアコンサルタント養成講座講および更新講習講師、スーパーバイザーとしてキャリアコンサルタントの育成に注力。 株式会社i-Grow代表取締役
筆者
LECキャリアコンサルタント養成講座国家資格「キャリアコンサルタント」試験対策講座キャリアコンサルティング技能検定(1級・2級)対策講座更新講習
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