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時代が求めるキャリア・カウンセリングとは

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目次

時代が求めるキャリア・カウンセリングとは

このコラムを執筆する私、馬場洋介は、現在、主に臨床心理分野の専門職大学院の教員として働いています。また、働く人を支援することを目的としたメンタルクリニックにおいて、リワークプログラムの責任者として、企画運営、グループのファシリテーション、個別カウンセリングなどを担当しています。そして、キャリア形成支援やメンタルヘルスケアなどに携わっている研究者や実践家などで構成される日本キャリア・カウンセリング学会の会長を務めています。このコラムでは、私自身が臨床の現場での実践活動や学会での活動において各領域の研究者や実践者との対話などを通じて感じている、時代が求めるキャリア・カウンセリングについて、私なりの意見を述べていきたいと思っております。なお、日本キャリア・カウンセリング学会では、「キャリア」をワークやライフも含む広い概念として捉え、「キャリア・カウンセリング」をキャリアカウンセリング、キャリアコンサルティングとほぼ同義と捉えて使っていますが、キャリア形成支援やメンタルヘルスケアも含むものという意味合いを込めて表現しています。

現状について

現在、経済社会において、ジョブ型雇用、自律型キャリアの導入、人的資本経営、健康経営への移行など、雇用や労働を取り巻く環境が急速に変化しています。また、AIを中心としたテクノロジーの急速な発展など、技術の変化も激しい状況です。そして、コロナ以降、働く個人の価値観の多様化が進み、ウェルビーイングを求める志向なども浸透し始めています。そして、我が国の2023年の出生数は、過去最少の75.8万人となるなど、少子高齢化のスピードも加速し、今後とも人が資本として、さらに重視されることが想定されます。このように経済社会のあらゆる領域での変化のスピードが速く、言わば、働く個人を取り巻く経済社会全体が転換期を迎え、新しい労働観や働き方などに移行しつつある状況です。このような移行期において、働く個人は、時間や場所に制限されないライフキャリアデザインが可能になる反面、いつ、どこで、誰と、どのように働くのか、そして、何のために働くのかなど、自身のライフキャリアを多面的に考えなければならない状況に直面しています。そのためには、自身の仕事とライフの関係性などを俯瞰しながら、多面的な視点から捉え直すことも重要です。しかし、すべての人が、このような状況に自分ひとりで適応できるわけでもありません。様々な領域での急速な変化の中で、今の時代のキャリア・カウンセリングはどのようなことが求められるのかについて考える必要があります。

キャリア・カウンセリングに求められること

厚生労働省のデータによると、キャリアコンサルタントの登録者数は72,534人(2024年2月末現在)まで拡大しており、社会的にも働く個人に対しても大きな影響を与える存在になってきました。そして、活躍する領域も、産業領域をはじめ、教育領域、福祉領域、医療領域、司法領域などにも広がり、支援する対象も、企業人に限らず、アンペイドワーク(家事、育児、介護など)の従事者、ボランティア、学生、シニアなどの個人、および、グループ、チーム、コミュニティなどの組織にも広がってきています。また、政府が発表する施策(経済財政運営と改革の基本方針2023:2023年6月16日閣議決定、第2章 新しい資本主義の加速)の中にも、「成長分野への労働移動の円滑化については、(中略)求職・求人に関して官民が有する基礎的情報を加工して集約し、共有して、キャリアコンサルタントが、その基礎的情報に基づき、働く方々のキャリアアップや転職の相談に応じられる体制の整備等に取り組む」と、キャリアコンタントが労働移動の円滑化の担い手として表現されています。一方で、厚生労働省「能力開発基本調査」(2022年度)によると、キャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所のうち、「キャリアコンサルティングを行う上での問題があった」と回答した事業所が挙げた問題点として、「キャリアに関する相談を行っても、その効果が見えにくい」という回答が最も多くなっていました。以上のように、現在は、キャリア・カウンセリングの効果が問われています。このような時代背景の中、キャリア・カウンセリングに求められることはどのようなことなのかについて考えていきたいと思います。

1.各個人のニーズに合わせたキャリアとメンタルケアの統合的支援


仕事とメンタルケア
これまで述べてきたような経済社会の急速な変化の中で、今後、働く個人のキャリア・カウンセリングに対するニーズが多様化していくことが想定されます。したがって、個人のニーズに合わせたキャリア支援が必要になっていきます。例えば、年代、ライフスタイル、性格、能力、価値観など、各個人の有する多様性、包括性などを踏まえた統合的な支援が求められます。そして、個人の価値観や働き方などが多様化することは、ライフキャリアの可能性や選択肢が広がることになりますが、その個人に統合する力がないと、キャリアデザインがまとまらず、拡散するリスクもあり、精神的な落ち込みにつながることもあります。このような局面では、不安や悩みを受け止めながら、キャリアとメンタルヘルスの統合的な支援が必要になります。そして、例えば、これまではメンタルヘルスの領域だった、私が従事している職場復帰支援においても、職場復帰後の再発を防ぐために、キャリア視点の支援が必要になってきていることを実感しています。また、失業者や中高年のキャリア支援においても、職を失う喪失感や年齢を重なる不安感などに寄り添う心理的な支援も必要になります。そして、社会正義のキャリア支援においても、様々な背景や価値観を持つ人々に対して、各個人の多様性を尊重し、自己実現を果たせるように、差別や偏見のない統合的な支援を提供することが必要です。さらには、法定雇用率の継続的な上昇に応じて、障害を抱えた方が組織の中でいきいきとは働くためのキャリアとメンタルケアの統合的支援も必要になってきています。このように、経済社会の様々な領域において、個人の多様な面を踏まえてキャリアをデザインしていくことが必要です。そして、クライエントひとりではキャリアデザインを統合していくことが難しい状況になっていくことが想定され、その支援を担うのがキャリアカウンセラーになっていくと思われます。

2.AIには代替できないこと


キャリアカウンセラーとして、今後、急速な社会・経済の変化に対応できるようになるためには、継続的に学習する力など、時代の変化に柔軟に対応する力が必要になります。前述したように、AIの急速な進展によってキャリア・カウンセリングの在り方は変わっていくことが想定されますが、もちろん、AIには代替できない人にしかできないこともあります。例えば、共感、直感、偶発性など、人の感性に重点を置いた支援は、現状のAIでは難しい面もあるのではないかと思います。この点も、AIの技術がさらに発展していくと、人の感性に重点を置いた支援もAIに取って代わる可能性もあるのかもしれません。しかし、アフターコロナになり、私自身、人と交流する機会が増えたことにより実感していますが、人と人との交流から醸成される感情的な面でのキャリアに対する気づきや動機づけなどは、AIには代替できないのではないかと思われます。したがって、感情面に重点を置いた支援などは、キャリアカウンセラーの重要な役割として残るのだと思います。また、倫理的な面も、AIには代替できない部分と思われます。各個人の特徴を踏まえながらも倫理的判断を行うことは、キャリアカウンセラーとして大事な機能です。このように、今後、人が行うキャリア・カウンセリングには、AIには代替できないことが求められるわけですが、AIには代替できない領域はどのようなことなのか、人が介在することで何ができるのかを将来を見据えながら継続的に意識して、今後、その能力を伸ばし、研鑽していくことが必要になります。

3.個と組織、そして、社会をつなぐ役割


社会をつなぐキャリコン
今後のキャリアカウンセラーの役割として、個と組織、そして、社会をつなぐことが求められます。例えば、セルフキャリアドックは、組織の中で働く個人のキャリア支援を通じて、働く個人と組織の活性化に寄与する仕組みであり、その中ではキャリアカウンセラーは個人と組織を有機的につなぐ役割を期待されています。現在、臨床心理の領域においても、アウトリーチなど、組織や地域などのコミュニティへアプローチすることが求められています。このように臨床心理分野のカウンセラーは、カウンセリングルームから外に出て、組織や地域の課題に対してコンサルテーションすることが求められています。例えば、産業保健に携わるカウンセラーは、ストレスチェック制度の中で集団分析のコンサルテーションに関わることになります。そして、今後は、キャリアカウンセラーも、個と組織をつなぐ役割として、産業保健領域の産業医、臨床心理士、公認心理師など、他の領域の専門家と連携する力が必要になってくると思われます。個人の働き方の多様化や組織を取り巻く環境の急激な変化などが相俟って、個と組織をつなぎ、両者に寄与できる支援の在り方が問われています。

4.リスキリングへ対応する力


現在、政府の主要施策として、リスキリングがクローズアップされています。「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」(2022年6月策定)における基本的な考え方は、「急速かつ広範な経済・社会環境の変化は、企業内における上司・先輩の経験や、能力・スキルの範囲を超えたものであり、企業・労働者双方の持続的成長を図るためには、企業主導型の教育訓練の強化を図るとともに、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進することが、一層重要となる」としています。しかし、日本経済新聞の世論調査(2023年10〜11月郵送調査)において「70歳以上働く」と回答した人が過去、最も高く39%に達したものの、「将来の生活に必要なお金の問題の備えてどのような取り組みをしているのか」の質問の複数回答で、「長く働くための技能向上」は14%に留まるなど、「技能向上」については2018年の調査以来横ばいで、働く続ける意向の人が増えてもリスキリングの意欲は高まっていないという結果でした。したがって、現状では、何のために学ぶのかなど、リスキリングの意義を見出していない人が多いことが想定されます。一方で、同ガイドラインにおいては、「キャリアコンサルタントによる学び直しの継続に向けた労働者に対する助言・精神的なサポートや、現場のリーダー支援」という表現で、キャリアコンサルタントがリスキリングにおいて果たす役割の期待が表現されています。さらには、「学びが継続できるような伴走支援」という項目では、「定期的・継続的な助言や精神的なサポートを行う仕組みを設けることが望ましい。その際、キャリアコンサルタント等の活用を検討することが望ましい」と記載されています。このように、キャリアコンサルタントは、働く個人の支援と組織の人材開発支援の両面から支援することができ、両者をつなぐ役割が期待されることから、管理職などへのサポート役や管理職とメンバーとの橋渡し役としての役割も期待されています。このように生涯学習やスキルの継続的獲得が求められる今後の経済社会において、キャリア・カウンセリングは個人のスキルアップや豊かなライフキャリアを実現するための学びを支援する役割を期待されています。そして、キャリアカウンセラーがリスキリングへ対応する力をつけるためには、自ら学び続ける必要があります。例えば、自身の実践的な活動を研究的に捉えて、学会で発表するなど、学会などの場を活用することも有効と思われます。さらに、何のために学ぶのかについて支援するために、キャリアカウンセラーとしては、常に変化して新たな職種やスキルが求められるようになっている労働市場にアンテナを張り、クライエントが将来に向けて適切な準備をするために、適切な情報提供などの支援をする必要があります。

まとめ

以上、述べてきましたように、時代が求めるキャリア・カウンセリングは多様であり、可能性があるものの、我々キャリアカウンセラーとしては、時代の変化や個人の価値観などの変化に対応しつつ、常に研鑽し変化し続けることが必要になってくると思われます。みなさま、今後、様々な機会を通じて学びを深めていきましょう。

筆者

馬場 洋介
筆者:馬場 洋介 講師

・2級キャリアコンサルティング技能士
・臨床心理士
・公認心理師
・キャリアコンサルタント
・産業カウンセラー
・第二種衛生管理者
・中小企業診断士
・産業ソーシャルワーカー2級(認定ワークライフコンサルタント)
・帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科長 教授
帝京平成大学大学院 臨床心理学研究科長 教授、医療法人社団平成医会 平成かぐらクリニック リワーク統括責任者。
株式会社リクルートでメンタルヘルス担当、株式会社リクルートキャリアコンサルティングで再就職支援のキャリアカウンセラーとして精神障害者等の就労支援に携わる。産業心理職育成をしながら、メンタルヘルス専門医療機関リワーク責任者。
学会活動:一般社団法人日本キャリア・カウンセリング学会会長、一般社団法人日本産業心理職協会理事(研修企画担当)、一般社団法人産業ソーシャルワーカー協会理事。
著書:『キャリア心理学 ライフデザイン・ワークブック』(共著 ナカニシヤ出版2018)、『心理職の専門性20-公認心理師の職責-』第9章:産業・労働分野における心理専門職のはたらき(執筆担当)(共著 NHK出版2020)、『心理カウンセラーが教える「がんばり過ぎて疲れてしまう」がラクになる本』(共著 ディスカヴァー・トゥエンティワン2021)。

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