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グラッサーの選択理論とキャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントは幅広いキャリア理論とカウンセリング理論を使って対人支援業務を行うため、広く心理学の理解が不可欠です。クライエントの特性や状況に応じてより効果的な支援を行うためには、特定の心理学に偏らずに折衷主義が大切になりますが、特に人間関係の改善と向上に効果的な心理学である「選択理論」をご存じでしょうか?
キャリア支援において職場や家庭における不満足な人間関係に起因する問題は多いため、キャリアコンサルタントの皆さんにはぜひ知っていただきたい心理学の1つです。


キーイメージ

目次

選択理論とは

選択理論はアメリカの精神科医であるウィリアム・グラッサー博士が1965年に提唱した人間の行動のメカニズムを体系化し、良好な人間関係を構築するために効果的な心理学です。

旧来の心理学では私たちは外部からの刺激(現象、言動、状況等)に反応して行動するという刺激反応理論の考え方です。一方、選択理論では外部からの刺激(現象、言動、状況等)はあくまで情報と捉えます。そしてその情報に対して人は自らの行動を選択していると考えます。
つまり選択理論では私たちの行動は外部からの刺激による外的コントロールによるものではなく、内発的動機づけ(内的コントロール)に基づいているという立場をとります。
例えば携帯電話が鳴った時、外的コントロールでは「電話が鳴るという刺激に反応したから電話に出た。」となりますが、内的コントロール(選択理論)では「電話が鳴っているのは情報に過ぎない。出るか出ないかは自分で選択できる。」と考えます。

選択理論の基本概念

5つの基本的欲求


選択理論の4つの基本概念の1つに「5つの基本的欲求」があります。これは私達人間には生まれながらにして「生存の欲求」「愛・所属の欲求」「力の欲求」「自由の欲求」「楽しみの欲求」の5つを遺伝子レベルで持っているというものです。
例を挙げると、

生存の欲求
食欲、睡眠欲といった身体的欲求に加えて、安心安全でいたい欲求。
愛・所属の欲求
愛し愛されたい、誰かと一緒にいたいという欲求。
5つの基本的欲求の中では1人で満たすことが難しい欲求。
力の欲求
勝ちたい、認められたいという欲求
自由の欲求
自分のやりたいように、好きなようにやりたいという欲求。
楽しみの欲求
新たな知識を学びたい、経験を積みたい、趣味を楽しみたいという欲求。

といった内容になります。
それぞれの欲求の強弱や満たし方は人によって異なり、私たちの行動はこれらの欲求を満たすために自らの行動を選択していると考えます。そして5つの基本的欲求が満たされることで私たちは幸せを感じます。

上質世界


選択理論2つ目の基本概念は「上質世界」です。上質世界とは私たちの脳の中にある記憶の世界です。この上質世界には5つの基本的欲求のうち、1つ以上を満たすイメージ写真が貼られていて、私たちはそのイメージ写真を手に入れることで基本的欲求を満たそうとします。

例えば、飲み会好きなある人は楽しみの欲求を満たしたいときに頭の中に飲み会のイメージ写真を思い浮かべます。そして、その飲み会に参加したときに楽しみの欲求が満たされます。
また、ある人は愛・所属の欲求を満たしたいときに大切な家族の顔が頭に浮かんでくるでしょう。
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そして上質世界は貼り替わることがあります。例えば、子供のときは公園のブランコに乗ることで楽しみの欲求を満たしていた人も、大人になると先ほどの飲み会で楽しみの欲求を満たすようになることがあります。
また、人は自分の上質世界を大切にしてくれる人のことを好きになりますし、逆に上質世界を満たすことを邪魔する人のことは嫌いになります。例えばゲームが大好きな子供に対して親が「面白そうなゲームだね!どんなゲームなの?」と興味関心を示すと子供は自分の上質世界を大切にしてくれる人だと感じて、「このゲームはこんなところが面白いんだよ!やってみる?」といったように仲良くなるきっかけになります。逆に「いつまでゲームやってるんだ!いい加減にしないか!」と怒鳴ってばかりいると、親を自分の上質世界の邪魔する存在として捉えて親を自分の上質世界から締め出してしまいます。

このように私たちは自分の5つの基本的欲求を満たしてくれる上質世界を手に入れるために行動すると共に、上質世界は良好な人間関係を築くために重要な役割を持っているのです。

全行動


選択理論3つ目の基本概念は「全行動(ぜんこうどう)」です。
選択理論では人の行動を「思考」「行為」「感情」「生理反応」の4つに分けて捉えており、この4つの要素の相互作用によって行動となります。この全行動は車に例えて説明できます。
車の前輪が思考と行為、後輪が感情と生理反応です。車のエンジンは5つの基本的欲求です。(私たちを動かすもの。)そして5つの基本的欲求を満たす上質世界を手に入れる方へ向かっていきます。(ハンドルを操作します。)

しかし、実際の車もそうであるように動くのは前輪、すなわち思考と行為だけがコントロールできるものであり、感情と生理反応である後輪は直接的にはコントロールが難しいものです。例えば、悲しい出来事があった時に感情や生理反応は直接コントロールすることが難しいですが、お笑い番組を観るという行為を選択することで、いつしか楽しい気分になることがあります。
つまり、自らコントロールできる行為の選択によって、コントロールが難しい感情と生理反応を間接的にコントロールできたということになります。
私たちが直接的にコントロールできることは思考と行為であることを知っておくことは感情と生理反応に振り回されないためにも重要なことなのです。

創造性


選択理論4つめの基本概念は「創造性」です。前述した全行動によって、私たちは上質世界になるイメージ写真を手に入れるために思考と行為をコントロールしていますが、その結果、得られると思っていたものが得られないときに新しいアイディアや選択肢を生み出す能力を創造性といい、これは誰にでも備わっています。

例えば、約束の目的地へ行きたいのに電車がトラブルで遅延している場合、「どの路線に乗り換えようか?」「他の移動手段はないだろうか?」と他の行動を考えます。このような脳の働きが創造性です。
この創造性には「どうしたらお客様にもっと喜んでもらえるどうか?」というポジティブなものもある一方、「仕事で嫌なことがあったので憂さ晴らしするにはどうするか?そうだ、お酒をたくさん飲んで忘れよう…。」といった決して効果的ではないネガティブなものもあります。

我々の日常と選択理論

選択理論はあらゆる場面の人間関係において役立ちます。
主なところでは、
・夫婦関係
・親子関係
・上司と部下
・先生と生徒
が挙げられます。
私たちはそれぞれ異なる5つの基本的欲求を持っており、それを満たすための脳の中のイメージ写真が貼られた記憶の世界、つまり上質世界が異なります。
お互いの違いを認めることができず、列挙した人間関係の場面において、力の強い立場の方が外的コントロールを使って相手を自分の思い通りに変えようとコントロールすること(したこと)はありませんか?そしてその行動の選択は良好な人間関係につながるのでしょうか?読者の皆さんも身に覚えがあることはないでしょうか?(筆者はあります。)

よりよい人間関係の構築に効果的な選択理論

冒頭でも述べたように選択理論は良好な人間関係の構築に効果を発揮する心理学です。そして何よりも実践的な心理学でもあります。
人間の行動のメカニズムを理解することで、相手の行動が5つの基本的欲求のどれを満たそうとしているのか?どの欲求が満たされていないからそのような行動を取るのか?
そして相手の行動に対して自分はどのような思考と行為を選択できるのか?
思考と行為を選択できるという前提に立てば、良好な人間関係のためには私たちにはどのような選択ができるのでしょうか?選択理論では私たちが相手に対してついやってしまい、かつ人間関係が悪くなってしまう「致命的な7つの習慣」と、良好な人間関係を築くために必要な「身につけたい7つの習慣」をそれぞれ掲げています。

致命的な7つの習慣
1.批判する
2.責める
3.脅す
4.罰する
5.文句を言う
6.ガミガミ言う
7.褒美で釣る

身につけたい7つの習慣
1.傾聴する
2.支援する
3.励ます
4.尊敬する
5.信頼する
6.受容する
7.意見の違いを交渉する

いかがでしょうか?前者の「致命的な7つの習慣」を使い続けたら人間関係がどうなるかは明らかでしょう。傾聴から始まる「身につけたい7つの習慣」で人と関わることによってどのような人間関係が構築できるかは、傾聴によってクライエントに関わるキャリアコンサルタントの皆さんであればイメージしやすいのではないでしょうか。

選択理論をキャリアコンサルティングで活用する

では選択理論はキャリアコンサルティングの現場ではどのように活用できるでしょうか?
例えば以下のような会社で働くクライエントがいた場合、選択理論の視点からどのようなことが考えられそうでしょうか?ここでは5つの基本的欲求を例に考えてみましょう。

クライエントの勤務先概要
(A〜Eのそれぞれが5つの基本的欲求と連動するように設定しています。)
A:勤務先は成長著しいベンチャー企業で仕事は忙しく、残業も多いため睡眠時間が少ない…生存の欲求
B:社員は若手が多く、大学のサークルのような明るく楽しい雰囲気…愛・所属の欲求
C:成果を出せば世間相場より高い給料がもらえる…力の欲求
D:仕事上の裁量は大きい反面、自ら仕事を創造する必要がある…自由の欲求
E:休日も会社のメンバーとのバーベキューやスポーツといったイベントが多い…楽しみの欲求

生存の欲求が強いクライエントがAの状況下で働くとどうでしょうか?
本当は睡眠時間をたくさん取りたい(生存の欲求が強い)のに、睡眠不足の日々が続くと生存の欲求が脅かされてしまい、仕事が嫌になってくる可能性があります。
一方、愛・所属の欲求が強いクライエントがBのような社風の会社で働くと、同年代の社員達と明るく楽しく仕事ができることで、所属の欲求が満たされるでしょう。

このように人それぞれ5つの基本的欲求の強弱と満たし方が異なることをキャリアコンサルタントは知った上で、クライエントはどの欲求が満たされなくて問題を抱えているのか、どの欲求をより満たして行きたいのか、厳密な線引きは難しいかもしれませんが、見立てを行う上での仮説のよりどころの1つとなりうるでしょう。
その上で、クライエント自身がより5つの基本的欲求を満たしていくために、どのような思考と行為を選択できるのかを一緒に考えていくことができます。
さらには職場の人間関係においても相手の上質世界にはどのようなイメージ写真が貼られているのか、そしてそのイメージ写真を手にするためにどのような行為を選択しているのか、さらにはどのようなことをして欲しいのかを知ろうすることで、職場の人間関係におけるお互いの違いを間違いではなく、5つの基本的欲求と上質世界の違いとして捉えることができるようになります。

その他には職場のマネジメントの場面でも「致命的な7つの習慣」ではなく「身につけたい7つの習慣」で部下やメンバーに関わる方が良好な人間関係につながることは明らかです。

選択理論を上手に活用できるキャリアコンサルタントになるために

選択理論は良好な人間関係を築くために効果的な心理学ですが、即効性が少なく効果が出るまで少なからず時間がかかる側面もあります。
キャリアコンサルタントが選択理論を上手に活用するためには、他の心理学にもいえることですが、まずはキャリアコンサルタントが選択理論を学び続け、実生活で実践してみることが最も大切です。かくいう筆者も選択理論に出会ってから10年以上学び続け、家庭や仕事において選択理論を実践することで、幸せな家族関係の実現や、仕事におけるお客様との良好な関係を築くことができるようになりました。まずはキャリアコンサルタント自らが選択理論の実践者であることが求められるのではないでしょうか。

まとめ

選択理論はあらゆる人間関係とその改善に向けた効果的かつ実践的な心理学です。
ビジネスでもプライベートでも活用できる選択理論をキャリアコンサルタントが学び実践することは、ライフキャリアの観点からもクライエント支援の幅を広げることにもつながります。そして、人のより良い働き方と幸せな人生の実現を側面からサポートするキャリアコンサルタント自らが幸せな人間関係の体現者であるための技術体得にもつながります。
ぜひ一人でも多くのキャリアコンサルタントが選択理論を知り、学び、実践していただけたら、より良好な人間関係であふれる社会の実現に近づくのではないでしょうか。

筆者

石井 慎太郎
筆者:石井 慎太郎 講師

・国家資格キャリアコンサルタント
・2級キャリアコンサルティング技能士
・行政書士
・ビジネス実務法務検定2級
・ビジネス選択理論能力検定2級
・メンタルヘルスマネジメント検定U種
大学卒業後、大手ビールメーカーへ営業職として入社。その後、人材サービス業界へ転職し、10年以上、就職・転職支援
および企業の採用支援に携わる。35歳で行政書士として独立開業し、酒販免許専門行政書士として独自のポジションを築く。現在は行政書士業務と並行してキャリアコンサルティング会社も設立し、キャリアコンサルタントと行政書士2つの専門職として複業を実践。長年の人材サービス業と営業経験にもとづくコミュニケーション力とバランス感覚をキャリア支援にも活かしつつ、働く人1人ひとりの可能性の探求に寄り添うことを信条としている。

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