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2000.vol.2
ワールド トレンド レポート
韓国
 韓国司法制度改革の現況と展望

太学館法政研究会 会長  王 明吾


1. 序 

文民政府(金泳三政権)の時に論議された司法制度改革では、司法試験科目の一部の変更と合格者数を漸進的に増員させるという結論で落ち着いた。政権が変わって、国民政府(金大中政権)になっても事件受任に汲汲としていた何人かの弁護士たちの法曹汚職事件は司法界に対する国民の不信を極度化させ、どうしても司法改革は優先的な国家課題になってしまったと化したといえよう。政治的な意味では、司法制度改革に一層の関心を寄せている一部の専門家たちとマスコミは司法改革の全ての課題が弁護士 たちの法律サービスに問題があると捉え、民間分野を主な改革対象と考えているのが実際である。
本稿では韓国司法制度の改革における問題点を指摘し,司法制度改革を論議しようとする際の、市民を規制している全ての法制度の民主性を確保する問題をはじめ、公共部門の一部ともいえる法執行の民主化(司法の民主化の問題を含む)、これを裏付ける国家機構の関連組織とその管理制度の改革など、より広範囲な改革が必要であることを前提に指摘したい。


2.法曹職域別現況と改善策

(1) 在野法曹界(弁護士)の法律サービスの問題
弁護士の役割は一般的に公益的な役割と当事者の代理人としての役割とに説明しえよう。公益的な役割に関しては国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現をあげられる。しかし、より大事で核心的なことは弁護士が具体的に役割を遂行する職務領域の範囲と手続きを公式化する法と司法制度の民主性によるものだと言える。
また,弁護士は当事者の代理人として訴訟業務に関与しながら事実を探し出し,
法律などの正当な適用を要求し,新しい法解釈を試し、公益的な活動を通して法の発展にも貢献している。したがって,弁護士は正義と権力の間で、微妙な緊張関係の狭間に立たされている。しかし,弁護士が受けた法的訓練は実定法と判例法に対する盲従的習得にすぎず、それはすでに与えられた権威によって形成されたものでしかない。司法研修課程では法理論の継続的な習得を通して、研修生同士で競争し、訓練を受けているが、彼らが日常的に解釈して運用する法令は一般的に規制的なものである


し抑圧的なものでもある。また,裁判官と検事に在職する際には多段階に階級化されている職への昇進のため同僚たちと、いつも激しい出世競争に悩まされることによって,官僚的な階層意識に支配されて,弁護士になっても仕方なく権力に対する服従者になるしかない。
法と司法制度が形式化して公共性が廃ることによって、権力とこれに融合している金権主義に対しては寛容となる反面、多数の国民に対しては過酷で、画一的なもので正義は有効な原理として働かない。このような状況が続くと弁護士は無
力な法技術者になって、弁護士たちの無競争が続き、本来弁護士が持つべき民主的な職業の倫理はますます没落する危険にさらされるだろう。
このような状況でもっとも急がなければならない課題は弁護士すべての専門化と職業倫理の水準を高めるための全面的な制度改革を検討することである。
(2)裁判官と検事制度の現況と改善策
司法運営の主体である裁判所と検察の組織と人事制度は業務量の適切な配分と業務の独立性が確保できるように改革しなければならない。専門性が高い組織


であるこそ自立性が高くなければ目標の実現可能性が高くならない。特に検事の場合には自律性を阻害している階級制度を廃止するのが正しいと考える。階級制度は内部で統制を強化させ不必要な業績競争を誘って能率が職業倫理になって、法的正義の実現という目標を破壊しやすいので検事と検事長との区別で単純化し、年数による経歴の待遇のみを区別するのが良いと思われる。裁判官の階級制度も当然に廃止されなければいけないし、裁判所の管理者は上級序列者の所管にすれば足りるだろう。裁判 官と検事の任命には5年〜10年の副裁判官または副検事等の任用に必要な経歴期間を置き、任用の際には人事委員会の面接審査を通せるようにする必要性がある。韓国の司法行政が当面している何より重要な所は裁判官と検事の過度な業務量にあるといえる。したがって,他の行政機関の所管業務と関係がある行政法規違反に対しては制限的な調査権を具備しうるように付随的な改革もしなければならない。これは警察と検察にあまりにも集中している調査・捜査の業務量を減らせる効果もあるし、こう


すれば調査業務が分化することも出来る。また、検事に対する事実上の勤務評価制度も廃止しなければならないし循環勤務制度も少なくとも3年以上の長期勤務にする条件での確実な制度として定着しなければならない。


3.法律専門職の増員制度の現況と改選策

司法試験と司法研修につながる現在の制度は、試験という限定的な能力評価で法学教育発展の阻害要因として作用している。司法研修は試験制度の不合理性と結合して専門能力が低下するばかりではなく、このような激しい競争が職業倫理にとって破壊的な要素として働いている。このような制度上の問題点を克服するため提案されたアメリカ式ロースクールまたはその類似制度は専門性を高める教育を実施する教授能力がまったく無いと言う致命的な弱点を持っている。法科大学院の専門教育が良く出来ない 場合、大学院は予備校のようになるのが明白なので学問研究の幅が薄くなる恐れがある。現在の法学大学はそのまま存続しておいて大学院の法学課程もそのまま存続し,研究領域の活性化のため法学部の教授には助教授以上の経歴5年以上の者には弁護士資格を付与する必要がある。また,法務法人の構成員になった場合外国法令などの難しい研究調査スタッフとして活用することが出来るし、特定分野についての長期研究は法律業務の専門化に大きな寄与をすることが出来る。また、選抜基準として


もっとも客観的な方法である司法試験制度は継続せざるを得ないが、但し試験方法と科目など具体的なことは韓国の伝統と良い点を顧慮、また、外国の良い制度の長所を受け入れればかなり良い制度が生まれるだろう。司法研修所の教育は激しい競争関係によって人間性が喪失しており、法曹としての倫理教育等 価値観形成がまったく難しい状況である。このようなことを克服する方法として公共機関、企業、金融機関、法務法人などで多様な経験を積ませ、社会正義と平和のため正しい法曹としての教養を身につけさせ,人権の死角地帯がないかどうかを深く考えられる機会を持たせるように制度を改善しなければならない。


4.結語

韓国における司法試験制度改革は受動的な様相を呈している。これは自律的な改革には限界があるからである。しかし、自律的な改革の限界が露呈され外部の力で成し遂げたとしてもこれを受動的な改革だと非難してはいけない。
問題は逆に、改革勢力の中立性と客観性をどう確保するかであり、誰が改革を主導するのかが問題にはなってない。対内外的に信頼性と競争力のある法曹システムを作るため要求される法曹改革の課題は、
(1) 裁判所の独立,信頼性を高めるため制度改革が必要である。
(2) 裁判官の増員及び裁判所の人事制度の改革が必要である。
(3) 検察の政治的な中立を保つために改革として特別検事制度の定着及び、検察の起訴権を統制できる日本の検察審査会制度の導入も検討しなければならないと思う。
以上の制度改革のため信頼性有り、競争力ある21世紀の司法及び法務行政のモデルを構築するためには相当な痛みが予想される。


21世紀の凡世界化の潮流に韓国の司法制度も、社会葛藤と利害の衝突を調整し、解消する民主的規範として充分に機能しなければならない。また、社会的葛藤の合理的な調整をめざし、民主的な司法制度に発展できるように自律性と専門性を確保して行けるように努力しなければならない。


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