|
|
●規制改革委員会による「規制緩和推進3か年計画」の推進(1998年度〜2000年度) |
政府行政改革推進本部に設置された規制改革委員会が「規制緩和推進3か年計画」の中で、業務独占資格の見直しを検討事項としています。これは具体的には、弁護士の独占業務とされている法律事務(弁護士法第3条、第72条)の一部を他の隣接職種(司法書士、弁理士、公認会計士等)に開放しようとするものです。例えば弁理士に工業所有権侵害訴訟における訴訟代理権を認めることは、出願から技術内容に深く関与していることから訴訟に於ける権利救済の場面も当事者を代理し、直接法廷活動を行うことは依頼者の意思に適うばかりでなく、知的財産権紛争処理の迅速な救済のためにも急務な事であります。また、法廷外の紛争処理機関(ADR)における代理権の付与についても同じく、早期の段階から夫々の分野に於ける専門家が関わるメリットは計り知れないものがあります。 この点は、1999年12月14日に出された「規制改革についての第2次見解」でも確認されています。 |
●司法制度改革審議会における議論(1999年7月から2年間) |
「国民により利用しやすい司法制度」(司法制度改革審議会設置法第2条)を実現するため、昨年7月、内閣に司法制度改革審議会が設置されました。12月22日には24項目にわたる論点が公開されましたが、最大のテーマである「弁護士のあり方」について、弁理士など隣接法律職種との業際問題を論じるとされています。 「国民により利用しやすい司法制度」は、裁判所が利用しやすくなることだけではありません。先ほど触れた、裁判外紛争処理機関の充実も不可欠です。知的財産権に関する紛争全般について、弁理士が活躍できる制度的基盤を築く必要があるといえます。 そこで、業際問題の突破口として、高度の技術知識を有する人材が裁判活動、裁判外活動を十分なし得るために、技術系の法曹資格者を登用する制度も考慮に値すると思います。司法試験制度の抜本的改革が望まれます。 また、わが国でも本格的導入が検討されている法科大学院においても、知的財産権に専門特化した人材を法律実務界に輩出しうる制度を設けるべきと考えます。 |
●工業所有権審議会答申に基づく弁理士法改正について |
1999年12月22日、通産省の工業所有権審議会は「弁理士法の改正等に関する答申」を出しました。答申では、知的財産専門サービスの充実・強化に向けて法務サービスについての業務規制のあり方を見なおすことが盛り込まれています。 弁理士は現在、特許庁への手続代理や鑑定、他にはユーザーニーズに応じて契約交渉の代行、警告状の送付、知的財産権全般についての相談業務など実に幅広く手がけています。ところが、弁理士がこのように多様なサービスを提供してきているといっても、弁理士法に充分な業務規定がないのです。そうだとすると、契約代理に関する業務や仲裁、調停、和解等は、「法律業務」(弁護士法第72条)に該当し、弁護士法に抵触するのではないか、との問題が発生してしまうのです。 しかし、弁理士法の規定を明確にしないことには、弁理士が堂々と多様なユーザーニーズに対応することができないのは明らかです。<前編>でも取り上げた「工業所有権仲裁センター」では、弁理士会が日弁連と共同で 数多くの相談を受け、紛争の事前解決に役立っています。弁護士法第72条により、弁理士は法律業務を一切取り扱うことができないとするのでは、相談者には何のメリットも生まれません。 従って、答申通り、弁理士法を改正して、弁理士という業務名称でもって、現在実務の主流をなすサービスが可能となるようにすべきと考えます。しかも、それは工業所有権に限らず、知的財産権全般(不正競争防止法、著作権法など)に業務権限を拡大すべきです。 答申ではその他、弁理士事務所の法人化、複数化を認めるべきことが挙げられています。 事務所を法人化すれば、所属弁理士の去就とは無関係に法人が存続するので、ユーザーにとっては安心して依頼することができる利点があります。また、情報・通信分野の大革命期ともいえる今日、全国で隈なく知的財産に関するサービスを受けるためにも、事務所の複数設置を認め、弁理士過疎が生まれないようにすることは当然の要請です。 最後にこのように、弁理士制度改革が様々なアプローチで行われています。わが国が真の知的財産立国となるために、大胆な法改正が行われることが必要なのです。 21世紀は弁理士の時代です。弁理士が国民にもっと身近な存在となり、一層のサービスが提供できるよう、研修等を積極的に実施し、絶えず弁理士制度の向上を図って参ります。 以 上
|
こうだ まさひろ
|
目次 |
|
Copyright 2000 株式会社東京リーガルマインド
(c)2000 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD. |