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平成12年2月1日 株式会社東京リーガルマインド 代表取締役会長・社長 反町勝夫 |
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昨年の第146回臨時国会は、「中小企業国会」と位置付けられた。中小企業の範囲、目的を変更するための中小企業基本法の改正、ストックオプション制度の対象を経営コンサルタントにも拡充するための新事業創出促進法と中小企業経営革新支援法の改正、その他、中小企業への無担保融資制度の創設、中小企業組合の組織変更手続きの簡素化など、中小企業が「日本経済のダイナミズムの源泉」(中小企業政策審議会答申)となることを志向した積極的な法整備がなされようとしている。 中小企業が未来の日本経済の主柱となるためには、まず、(1)21世紀における高度知識情報産業・グローバル経済下で、わが国の中小企業を維持・発展させる中核となる経営者の育成が肝要であり、そして(2)市場の動向を見極め、関係法令に熟知し、経営全般にわたって診断、助言をする専門家の存在が不可欠である。この点、わが国には中小企業診断士制度があるが、士業としての目的、業務範囲、他士業との関係について具体的に定めた法律が存在しない。 この点、わが国の中小企業診断士は(2)の役割を担っているが、企業内で活躍する者が少なく、十分でない。まして、(1)の役割を果たすべき経営専門家をわが国では公的に育成していない。大学の経営学部や大学院の経営学研究科における教育が、企業実務への活用・応用という点で不十分であることは周知のとおりである。 また、中小企業に限らず大企業も不況の煽りを受け、業務縮小、大規模なリストラが進んでいる。近時、産業再生法の適用を受ける大企業が現れるなど、全体的に経営環境は深刻である。 そこで企業経営のボトムアップを図るため、これからは企業経営と企業診断の専門家が起業支援、経営コンサルタント業務の中心的役割を果たし、米国MBA(Master of Business Administration :経営管理士)と同様に、企業経営のプロとして活躍することが要請される。それは将来の社長候補を育成することにつながる。 従って、企業経営の人的基盤整備として「企業経営管理士法」(仮称)を制定し、現行の中小企業診断士に替わる新たな士業としてその位置付けを明確にすべきである。企業経営管理士法には、(1)企業経営管理士の職責、業務に関する規定、(2)企業経営管理士試験に関する規定、(3)企業経営管理協会への登録、会則に関する規定、(4)罰則規定、が最低限必要である。ここに、「企業経営管理士法 試案」を示す。 |
【 企業経営管理士法 試案 】 | ||
第1条[目的] この法律は、企業経営管理士の制度を定め、その業務の充実を図ることにより、起業支援、経営診断、経営革新及びその他企業の市場競争力強化に必要な助言を与える権限を与え、もつて企業経営の健全な発展に寄与することを目的とする。 第2条[職責] 企業経営管理士は、前条の目的を達するため、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。 第3条[業務] (1) 企業経営管理士は、他人の嘱託を受けて、次に掲げる業務を行うものとする。 一 起業に関する業務 ニ 経営診断に関する業務 三 経営管理の企画立案及びその遂行 四 経営革新に関する助言 五 その他政令で定める業務 (2) 企業経営管理士は、前項に規定する業務であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。 第4条[資格] 企業経営管理士試験に合格した者は、企業経営管理士となる資格を有する。 第5条[欠格事由] 次に掲げる者は、前条の規定にかかわらず、企業経営管理士となる資格を有しない。 一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから2年を経過しない者 ニ 未成年者、禁治産者又は準禁治産者 三 破産者で復権を得ないもの 四 第18条の規定により業務の停止の処分を受け、その処分の日から2年を経過しない者 第6条[企業経営管理士試験] (1) 通商産業大臣は、毎年1回以上、企業経営管理士試験を行わなければならない。 (2) 企業経営管理士試験に関する事項は、本法による他、省令をもつて定める。 第7条[企業経営管理士試験] (1) 企業経営管理士試験を分けて、第1次試験、第2次試験及び実習とする。 (2) 第1次試験及び第2次試験は、筆記式で行う。 第8条[第1次試験] (1) 第1次試験の必須科目として次の6科目より出題する。 一 民法 ニ 商法 三 経営管理 四 財務管理 五 販売管理 六 労務管理 (2) 第1次試験の選択科目として次の8科目を出題し、4科目を必須とする。 一 商業に関する経済的知識 ニ 情報・サービスに関する経済的知識 三 店舗施設管理 四 仕入管理 五 商品知識 六 経営情報管理 七 組織管理 八 情報技術 第9条[第2次試験] (1) 第1次試験の合格者に対し、第2次試験を行う。 (2) 第2次試験では、企業経営及び企業診断業務の実例を出題する (3) 第2次試験に合格した者に対しては、その後第2次試験を免除する。 第10条[実習] 第2次試験の合格者に対し、実習を行う。 第11条[受験手数料] 企業経営管理士試験を受けようとする者は、政令で定めるところにより、受験手数料を納めなければならない。 第12条[試験委員] (1) 企業経営管理士試験の問題作成及び採点を行わせるため、通商産業省に企業経営管理士試験委員を置く。 (2) 企業経営管理士試験委員は、企業経営管理士試験を行うについて必要な学識経験のある者のうちから、試験の実施ごとに通商産業大臣が任命する。 (3) 前2項に定めるもののほか、企業経営管理士試験委員に関し必要な事項は、省令で定める。 第13条[企業経営管理協会] (1) 企業経営管理協会は、企業経営管理士の業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び研修に関する事務を行う。 (2) 企業経営管理協会は、全国都道府県に支部を1以上設置しなければならない。 (3) 企業経営管理協会及びその支部は、法人とする。 (4) 企業経営管理協会及びその支部は、会則を定めなければならない。 第14条[試験の委任] (1) 通商産業大臣は、企業経営管理協会に企業経営管理士試験の実施に関する事務(合格の決定に関する事務を除く。以下、「試験事務」という。)を行わせることができる。 (2) 通商産業大臣は、前項の規定により企業経営管理協会に試験事務を行わせるときは、その旨を官報で公示するものとし、この場合には、通商産業大臣は試験事務を行わないものとする。 第15条[登録] (1) 企業経営管理士となる資格を有する者が、企業経営管理士となるには、企業経営管理協会に備える企業経営管理士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地その他省令で定める事項の登録を受けなければならない。 (2) 企業経営管理士名簿の登録は、企業経営管理協会が行う。 (3) 登録の申請手続、取消に関する事項は、会則で定める。 (4) 登録を受けた企業経営管理士は、会則を遵守しなければならない。 第16条[事務所] (1) 企業経営管理士は、政令で定める基準に従い、事務所を設けることができる。 (2) 前項で規定する事務所は、法人とすることができる。 (3) 前ニ項で設置する事務所を、ニ以上設けることを妨げない。 第17条[秘密保持義務] 企業経営管理士は、正当な事由がある場合でなければ、業務上知り得た事実を他に漏洩してはならない。 第18条[懲戒] (1) 企業経営管理士がこの法律又は企業経営管理協会の会則に違反したときは、企業経営管理協会は次に掲げる処分をすることができる。 一 戒告 ニ 2年間の業務の停止 三 除名 (2) 前項の処分については、行政手続法(平成5年法律第88号)第2章及び第3章の規定は、適用しない。 (3) 前項までに規定するほか懲戒に関する手続は、会則で定める。 第19条[企業経営管理士でない者の取締まり] (1) 企業経営管理士でない者は、第3条に規定する業務を行ってはならない。 (2) 前項の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 第20条[虚偽の登録申立て] 企業経営管理士となる資格を有しない者が、企業経営管理協会に対し、その資格につき虚偽の申請をして名簿に企業経営管理士名簿に登録させたときは、1年以上の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 第21条[省令への委任] この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、省令で定める。 附 則 第1条 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 以 上
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