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2000.vol.1


 【提 言】 公証人法に基づく公証人試験を早期に実施すべきである
 公証人とは、(1)公正証書の作成、(2)私署証書(私文書)の認証、(3)会社定款の認証を業務とする者であり(公証人法第1条)、全国各地の地方法務局、公証人役場で業務に携わっている。上記、(1)〜(3)の業務については基準報酬額が高く、東京都内のある公証人の例では年収4,000〜5,000万円といわれ、かなりの高収入を得ている。

 ところで、公証人は例外なく、法曹(裁判官、検察官、弁護士)出身者や法律事務官など一定の実務経験を積んだ者が無試験で、選考審査を経るだけで資格を得ている。

 しかし、公証人法第13条の2本文は「法務大臣ハ当分ノ間多年法務ニ携ワリ前条ノ者ニ準スル学識経験ヲ有スル者ニシテ政令ヲ以テ定ムル審査会ノ選考ヲ経タル者ヲ試験及実地修習ヲ経スシテ公証人ニ任スルコトヲ得」と規定し、公証人は試験を行って任用することを前提としている。この点、次の3点が問題となる。

 まず、条文上「当分ノ間」との留保を附しておきながら、明治42年8月16日の法施行以来90年以上にもわたり、一度も公証人試験が実施されていない。これは明らかに、内閣による法律の誠実な執行を定めた憲法第73条に違反する。

 そして、現在の選考任用制度においては、対象者が法曹、法律事務官等に限られ、一般市民に公証人になる途が開かれていない。実際、平成10年5月現在で、公証人登録者は全国で549名しかおらず、平成元年から10年間の伸び率もわずか4.4%にとどまっている。

 このような閉鎖的な制度の下、冒頭で述べたように公証人の年収が高水準にあり、事実上、法曹、法律事務官の退職後の天下り先となっているのである。一般の市民が公証人試験を受験できないというのは、法の下の平等を定めた憲法第14条1項、職業選択の自由を定めた憲法第22条1項に違反する。

 最後に、本来的な他士業業務に介入していることが問題となる。不動産登記事務における登記原因証書の認証のように、明らかに司法書士に帰属させるべき業務について公証人が権限行使しているため、不動産取引実務では大変な不便をきたしている。もし試験が実施されているとしたら、司法書士が公証人試験に合格し、公証人の資格をも得ることによって、登記業務の飛躍的改善を図ることが可能となるのである。

 従って、公証人法に基づき、受験資格を不当に制限することなく、公証人試験を早期に実施すべきである。そして、公証人制度が開かれた形で、国民から十分な理解と信願を得られるよう、法務省、日本公証人連合会は制度普及に努めるべきである。
以 上


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