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vol.4
ワールド トレンド レポート
ロシア
 外国投資法

佐藤賢明(糸賀法律事務所ロシアプロジェクト研究員・二松学舎大学講師)


 長い間待たれていた法律がやっと採択施行されたとの間である。
 この法律の採択のため兆時間がついやされた主な原因は;@エリツイン大統領の政治的影響力低下、A保守派の中に、「外国人(外国投資者)にだけなぜ優遇措置を与えなければならないのか。外国投資者およびロシアの投資家に対しては、法的に同等の権利義務が与えられている現状ではこのような法律は不要ではないか」との主張が強かったからである。
  この法律が効力を得るまでは
ロシア共和国外国投資法が施行されていた。現行外国投資法が施行されるにともない、旧外国投資法は効力を失うこととなった(第25条)。旧法と新法の違いは以下のようになる;@“優先的投資プロジェクト”政策の導入、A連邦構成主体にも外国投資優遇措置の可能性を与えた、B外国投資家に対して不利な連邦法令の制定の防止、C経済特区の規定がない、などである。
 この法律は1999年6月25日国家会議にて採択されて7月9日大統領にて署名され効力を得た。以下詳しく紹介する。


  • 適用範囲(第1条)
     この法律は銀行その他金融機関および保健組織には適用されない。また、教育、慈善、科学、宗教目的を持つ社会的に有用な非商業組織に対する投資にはこの法律は適用されない。
  • 外国投資家(第2条)
     外国投資者とは外国法人、外国自然人、ロシア連邦以外の無国籍者および国際組織で ある。外国法人はその設立国、外国の市民はその国籍国、無国籍者はその定住地において民事上の権利能力や行為能力を、かつ、これらの国においてロシアに対し投資活動を行う権利を有するものである。
  • 外国投資の定義(第2条)
     ロシア連邦領内における企業活動に対し外国投資家に属する資本が投資されることをいう。10%以上外国資本が取得した企業は、“直接外国投資”、外国投資総額が10億ルーブル以上のプロジェクトまたは商業組織の定款資本に外国資本が1億ルーブル以上であり連邦政府が承認するリストに含まれる場合“優先的投資プロジェクト”と呼ばれる。
  • 外国投資の法的規制(第3条)
     外国投資の法的規制はこの法律、連邦のほかの法令および国際条約により行われる。また、連邦の連邦構成主体も独自に自己の管轄の範囲内において外国投資を規律する法規を選択する権利を有する。
  • 外国投資の商業組織に係る法制(第4条)
     外国投資家の活動および投資から取得する利益に対する法制は、ロシアの投資家による同様な活動に対する法制より非優遇的なものとすることはできない。外国投資家によるロシア憲法体制、モラル、他人の健康や権利、国防および国家安全保障にかかわる投資を制限することができる。
  • 外国投資家の活動に対する保護(第5条)
     この法律、連邦の他の法令および国際条約により保障される。
  • 投資実施形態の保証(第6条)
     連邦法令で禁止されていないいかなる形態の投資活動を外国資本投資家は実施する権利を有している。
  • 権利義務の他のものへの移転の保証(第7条)
     民事法令の規定に従い、他のものに対し外国投資家は自己の権利や義務を契約により譲渡することができる。
  • 国有化および徴発の補償(第8条)
     外国投資家の財産は、国有化および徴発を含め強制収用に付すべきではない、と規定されている。ただし、連邦法および国際条約の規定がある場合は除かれる。すなわち一定の状況になれば国有化が行われる可能性があることを示唆している。国有化や徴発の場合には、財産の価額が補償される。
  • 外国投資商業組織にたいする法令による非優遇的変更の防止(第9条)
     輸入関税、連邦税などに外国投資商業組織に不利となる制度の変更や追加は行われない。 
  • 紛争解決の保証(第10条)
     外国投資家の活動に関連し生じた紛争は裁判所、仲裁裁判所または国際仲裁において解決される。
  • 収入および利益の国外への送金の保証(第11条)
     外国投資家は公租公課を納付した後の金員をロシア連邦以外へ障害なく送金することができる。もちろんロシア国内への再投資も可能である。  その金員の内容は、@利益、配当、利息その他の収入形態で得た投資の収入、A外国投資商業組織またはその支店の契約等による義務履行のための金員、B外国投資商業組織またはその支店の清算、投資財産、財産権および知的活動の結果にたいする非排他的権利の譲渡に関し外国投資家が得る金員、Cこの法律第8条所定の国有化や徴発の補償金、とされている。
  • 有価証券を取得する権利の保証(第13条)
     ロシアの商業組織の株券やその他の有価証券、また国の有価証券を取得する権利を有す。
  • 民営化への参加の保証(第14条)
     現在ロシアで進められている国営企業また地方自治体所有の企業の民営化プロセスに外国投資家が参加することができる。
  • 不動産取得の権利(第15条)
     土地区画、天然資源、建物、施設の外国投資家による取得は連邦法令および連邦構成主体の法令に従う、と規定されている。実際には外国投資家にとって都市の建物およびそれに付随する土地区画の所有権は認められるが、現在のところ農地は認められないことになる。
  • 関税特典(第16条)
     優先的投資プロジェクトの実施に対し特典が提供される。
  • 連邦構成主体および地方自治体機関が提供する特典および保証(第17条)
     連邦構成主体および地方自治体の機関は自己の権限の範囲内において、自己の予算資金または予算外の資金により、外国投資家に対して特典や保証を提供することができる。
  • 外国投資商業組織の設立および清算(第20条)
     外国投資商業組織の設立および清算は民法典および連邦所定の法令に従い実施される。国家登記には以下の書類が必要とされる。@定款および設立契約(民事法令に所定)、A外国投資家設立国の登記簿の謄本または法的地位を証明する文書、B外国投資家の支払能力を証明する取引銀行の文書、C国家登記料納付の証明である。もし、国家登記が拒否された場合には裁判手続により不服を申し立てることができる。
  • 外国法人の支店設立、清算および支店への要求(第21条、第22条)
     支店の設立、活動および清算に関する国家管理は連邦政府所定の手続による。支店に関する要求には、支店および本店(本社)の組織・法的形態、ロシア国内での他の支店の所在地、本店の法定住所、支店設立目的、活動内容、固定資産の構成・金額および投資時期および支店の資格を参考に本店が行う。正式認可の日から企業活動を行うことができる。
  • 外国資本誘致機関の設立(第24条)
     連邦政府は外国直接投資を誘致するため、またちょうせいするための機関を設立する。

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