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vol.4

ゴースト・オブ・ミシシッピー
ゴースト・オブ・ミシシッピー
映画で学ぶアメリカ法
発売元/東和ビデオ、販売元/アスミック
価格/16,000円(税抜)

DATA
 事実にもとづいた感動的な法廷映画です。
 原題は“GHOST OF MISSISSIPPI”、米Castle Rock Entertainment製作(1996年)です。日本語字幕版ビデオはアスミック・エースエンターテインメント・東和ビデオ製作(1998年)、アスミック販売で発売されています。 
 ヘイト・クライム(人種差別犯罪)殺人を題材に、正義の実現に命をかける法律家の法廷活動を描いたもので、往年の名作「アラバマ物語」や「死刑台のメロディー」、新しいものでは「評決のとき」「真実の行方」の系譜に属する映画で、観る人を感動させます。1993年にミシシッピ−州で行なわれた判決は、事件発生以来30年が経過していたという、極めて異例の事件でしたが、
この裁判の経過を法廷映画にしたものです。
 製作は「ミシシッピー・バーニング」を作ったフレデリック・ゾロ、監督は軍事法廷映画の秀作「ア・ヒュー・グッドメン」のロブ・ライナー、アメリカ映画界の良心的社会派作品の中心的人材です。主演は「陪審員」で犯人役を演じたアレック・ボールドウィンが良心的な検事役で、「暗殺者の徽章」「誘導尋問」「虚跡」などの法廷映画で検事や法律家を演じたジェームス・ウッズがこの映画では白人至上主義者の被告を熱演しています。このほか、「天使にラブソングを」のウーピー・ゴールドバーグ、「エアフォース・ワン」のウィリアム・H・メーシー、「アメリカン・ゴシック」のルーカス・ブラックなど主演級の俳優陣が出演している良心作です。


STORY
 舞台は南部ミシシッピー州ジャクソン・シティ。
 黒人に白人と同じ権利を認めた連邦市民権法の制定を演説するケネディ大統領とだぶって、黒人公民権運動家メドガーが家族の目前で人種差別主義者バイロン(ジェームズ・ウッズ)に射殺される場面から始まります。1963年、まだ黒人差別の色濃く残る南部の町の出来事です。
 事件後すぐにバイロンは逮捕され裁判にかけられますが、陪審員の評決が全員一致とならず、ハング・ジュリー(評決不一致)としてミストライアル(審理無効)となります。再度の起訴でもまったく同じ経過となりバイロンは、
釈放されたばかりか住民の英雄となってしまいます。時は流れ、事件から27年が経過します。
 射殺された黒人公民権運動家メドガーの未亡人マーリー(ウーピー・ゴールドバーグ)は正義を求めて三度目の再審を申立てます。事件の処理がまわってきたのは、ジャクソン・カウンティ地方検事局の次席検事ボビー(アレック・ボールドウィン)でした。ボビーの上司は、事件から30年近くも過ぎ、今回の申立が、合衆国憲法修正第6条の“迅速な裁判を受ける権利”に違反するとして起訴に対して懐疑的ですが、ボビーは私立探偵チャーリー(ウィリアム・H・メーシー)の協力を得て事件のあった当時を掘り起こし始めます。


 南部に依然として残る黒人差別、その黒人の側に立つボビーへの反感から、数々の迫害が始まります。自宅を爆破され、妻に去られるといった出来事にもみまわれ、さらには黒人の側からも疎外されるボビーですが、不屈の意志で3度目の起訴にこぎつけます。
 ジャクソン・シティ州裁判所で真実と正義を求めての審理が始まります。大陪審起訴、罪状認否、冒頭陳述、証人尋問、そして最終弁論へ続く法廷場面は白眉のシーンです。


POINT
 実話にもとづいた映画ですが、裁判が早いことで有名なアメリカにもこのような事件があったことは驚きです。日本でも26年かかった甲山事件の判決がありましたが、基本的に裁判は長期間かかると被告人はあらゆる面で苦痛を受けます。そこで迅速な裁判を受ける権利が保証されるべきであるという考え方から、前述のアメリカ合衆国憲法修正第6条にも、そして日本国憲法第37条にもこれが特記されているのです。
 この映画では、過去2回も有罪評決を逃れた犯人が最後に終身刑となるシーンで終わりますが、正義(ジャスティス)の実現を優先しての評決であったわけです。

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