日本の国際競争力の低下

 わが国の国際競争力が低下している。世界に負けない「ものづくり」が、これまでの日本を支えてきたが、アジア、特に中国の「世界の工場」に太刀打ちできなりつつある。国内の経済・社会全体の活性化のためには、国際競争力の強化が急務である。

なぜ「知的財産」なのか


 大量生産の時代は終わった。研究活動や創造活動の成果 である知的財産、つまり企業の技術・ブランド・デザイン・ノウハウといった、無形資産という高い付加価値を持つ品を生み出す。これが、国際競争に勝ち残る国家戦略として、必要とされる知的財産であり、そのための経済・社会システム全体の再構築が「知的財産立国」の基盤となる。

時間との戦い


 日本が世界で巻き返しをはかるためには、もはや時間的余裕はない。国家戦略として、集中的・計画的に「知的財産立国」実現のための基盤をつくらなくてはならない。これに対し現状は、知的財産戦略と密接に関連する、経済産業省(特許庁)、裁判所、法律実務家、大学および研究所、企業から構成されたメンバー、および関連府省による、「知的財産戦略会議」が設置され、一丸となって「知的財産立国」を実現する態勢が整ったばかりである。

「人材」が最大のポイント


 「知的財産立国」のための環境が整ったとしても、それを支える人材の不足は危機的である。即戦力となる人材の確保、そして将来を担う人材の養成の両方が必要である。現在、ロボット研究に没頭しているのは、「鉄腕アトム」世代であり、子どもの頃の夢が原動力となっている。人材の確保のためには、知的財産に対する世代を超えた情熱・関心が求められるだろう。

国民全体が当事者として


 わが国には、明治期の殖産興業、戦後の高度経済成長を支えた「ものづくり」という、紛れもない成功の歴史がある。
 21世紀を迎え、国民が、日本の経済的将来像に当事者としての明確なビジョンを持つことが肝要である。「知的財産戦略会議」が中心となって、その活動を主導する、そのような「知的財産」政策が望まれる。






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知的財産戦略会議
「知的財産戦略会議」によって、本年7月3日、「知的財産戦略大綱」が決定された。2005年度までを目途に、政府が知的財産に関わる制度等の改革を集中的・計画的に取り組むことが提言されている。知的創造サイクルの活性化という理念を国家目標とし、知的財産戦略の工程表ともいうべき、担当省庁・期限も明らかにされた具体的行動計画がまとめられている。そのため省庁横断的に改革を主導する「知的財産戦略本部(仮称)」の設置、また2003年の通 常国会までの「知的財産基本法(仮称)」制定が盛り込まれた「大綱」となっている。5日には、「準備室」が発足した。

※知的財産戦略会議

平成14年2月25日内閣総理大臣決済による。
国内産業の国際競争力の強化、経済の活性化の観点から知的財産の重要性が高まっていることを受け、知的財産戦略を早急に樹立し、その推進を図るため設置された。
会議は、内閣総理大臣、以下各閣僚、青木初夫氏(藤沢薬品工業株式会社代表取締役社長)、座長:阿部博之氏(東北大学総長)、荒井寿光氏(知的財産国家戦略フォ−ラム代表、日本貿易保険理事長)、安西祐一郎氏(慶應義塾塾長)、大山永昭氏(東京工業大学フロンティア創造共同研究センタ−教授)、桑原洋氏(総合科学技術会議議員)、小池晃氏(日本弁理士会前会長)、富塚勇氏(社団法人日本レコ−ド協会会長)、中山信弘氏(東京大学大学院法学研究科教授)、松尾和子氏(弁護士、弁理士)、御手洗冨士夫氏(キヤノン株式会社代表取締役社長)より構成され、内閣総理大臣が開催する。

知的財産立国

「知的財産立国」とは、発明・創作を尊重するという国の方向を明らかにし、ものづくりに加えて、技術、デザイン、ブランドや音楽・映画等のコンテンツといった価値ある「情報づくり」、すなわち無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより、我が国経済・社会の再活性化を図るというビジョンに裏打ちされた国家戦略である。(「知的財産戦略大綱」より)