多様な公益を実現するNPO

 NPOは、構成員たる市民一人ひとりが公益を目指して活動するところに意義がある。従来からある国や自治体、政党などを媒介して国民、市民の意思を公益に反映、実現させていくという手法をとらない。
 1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では、救助と復興に数多くのボランティアが活躍したことにより、市民活動が注目され始めた。その後、1998年12月にNPO法が施行されると、多くのNPO法人が誕生し、行政や営利企業とは性質を異とする「非営利組織」として、行政が対応することが困難な公益活動を展開している。
 福祉・教育の充実、安全確保、環境美化などさまざまな課題が増えつつある今、それに伴って求められる公益も多様化・多元化している。NPOは、それらに即座に反応し、対応し得る存在として、その期待が高まっている。

NPOが発展するための課題


 右記のとおり、NPOが抱える課題は決して少なくない。特に活動を維持するための資金に関する問題は、任意団体も含め、数多くのNPOが抱えている。そこで、政府は資金的問題を克服し、支援するための優遇税制等を施行するが、認定条件が厳しく、2002年5月末現在、認定NPO法人は5団体にすぎない。
 国民、市民の有意義な活動を絶やさず、発展させるためにも、然るべき実効的対策が今、求められている。

1 NPOセクターが自ら解決すべき課題

(1)資金調達
・NPO活動を支える基盤として、いかにして資金を調達するか。
・安定した財政基盤を確立するため、多様な財源をバランス良く組み合わせることが必要。
(2)人材確保
 多面的なNPOの運営を担う有能な人材をいかにして確保するか。
(3)マネジメント(人材研修、情報公開・評価等)
 NPOマネジメントを体系化し、組織運営の能力向上を図ることが必要。

2 社会全体で取り組むべき課題


(1) 個人の参加促進
 NPOに関心を持つ個人が、実際に従事、参加しやすくするための環境整備が必要。
(2)企業、行政とのパートナーシップ
・企業、行政とNPOのパートナーシップに関する意義・目的の明確化。
・パートナーシップ促進のための仕組みづくり。
(3)税制等の環境整備
NPO活動を支える税制等の環境整備を図ることが必要。
(4)評価・情報公開
・NPOが信頼度を高めるために必要な情報公開。
・NPO評価を進めるための具体的方策。

参考:産業構造審議会NPO部会「中間とりまとめ「新しい公益」の実現に向けて」(平成14年5月14日)






KEYWORDS

NPO(Non-Profit Organization)
民間の非営利組織。政府・自治体や私企業とは独立した存在として、市民・民間の支援のもと、福祉や環境、国際協力、人権問題などの社会的な課題に、市民が主体的に取り組んでいる組織で社会的な公益活動を行う組織・団体。非営利団体、民間非営利団体。「非営利」とは、「無償」で事業活動を行うことではなく、利益(剰余金)を団体の構成員間で分配しないことを意味している。したがって、民間の非営利組織が有償でサービスを提供したり、金銭のやりとりを伴う事業を行ったり、有給のスタッフを擁したりすることは可能である。

※NPO法人

特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、資料1の要件を満たしている団体。毎年、事業報告書や収支計算書などを所轄省庁に提出して情報公開をしなければならない。また、法人住民税(均等割)が課税されたり、税法上の収益事業を行う場合にはその所得に対して法人税が課せられる。従業員を雇う場合には社会保険などの関連する諸手続きが必要になる。

※認定NPO法人

NPO法人のうち、その運営組織及び事業活動が適正であること並びに公益に資することについて一定の要件を満たすものとして、国税庁長官の認定を受けた特定非営利活動法人(以下、認定NPO法人)。平成13年10月1日より、認定NPO法人に対して行った寄附を寄附金控除等の対象とする税制上の特例措置が講じられている。認定の有効期間は、国税庁長官が認定の際に定めた日から2年間であるが、認定の要件を満たさなくなるなどの場合には認定が取り消される。認定を受けようとする場合には、主たる事務所の所在地を所轄する税務署を経由して国税庁に提出することとされている。

[参考]NGO(Non-Governmental Organization)

非政府組織。政府間の協定によらずに創立された民間の国際協力機構。国際連合憲章第71条「経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適当な取り決めを行うことができる。」に由来している。NPOが“Non-Profit”と営利企業との区別 が表現されているのに対し、“Non-Governmental”と政府との区別が表現されている。一般 的に、飢餓救済、環境、平和などの分野において、国境を越えて活動を展開している組織(活動)を意味する言葉として使われている。

NPO法

特定非営利活動促進法。平成10年12月1日施行。特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること等により、社会貢献を目的とした、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な活動、特定非営利活動の健全な発展を促進し、公益の増進に寄与することを目的とする。「特定非営利活動」は、別 表に掲げる活動(11頁資料参照)に該当する活動としている。この法の成立によって、活動を行う民間の市民団体や市民事業体が緩やかな条件で法人格を取得することが可能になった。