冷戦終結後の日本の防衛政策

 冷戦終結後の国際情勢は、それまでの東西対立という明確かつ基本的な枠組がなくなっている。「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」で述べられているように、「国際情勢は依然として不透明・不確実な要素をはらんでおり」、アジア太平洋地域においても様々な不安定要因が存在している状況である。
 また、日本が属するアジア太平洋地域の軍事情勢については、極東ロシア等、軍事力の量 的削減や軍事体制に変化が見られるものの、核兵器等大規模な軍事力が未だ各地域に散在し、多くの国が、経済発展を背景に、軍事力の拡充・近代化を進めている。また、朝鮮半島の問題等、不安定要素を含んだ様々な問題をかかえている。これまで軍縮はなされてきたものの、「アジア太平洋地域における主な兵力の状況(概数)」を見ても、国際平和への脅威が解消されたとは言い難い。
 冷戦終結後、東西対立を前提に組み立てられた日米安全保障体制(以下、日米安保体制)の立て直しのため日本は、集団的安全保障の在り方につき再考を迫られた。その後日本は、日米ガイドラインを踏まえ、国際情勢に対応していくための防衛政策として、引き続き「日米安全保障条約」・日米安保体制を基調とすることを確認した。それは日米安保体制を、多国間あるいは二国間の安全保障に関する対話・協力の推進や、国際連合(以下、国連)の諸活動への協力等、アジア太平洋地域ひいては世界の平和と安定へのわが国の積極的な取組みにに資するものとして、わが国の平和と安全の確保及びより安定した安全保障環境を構築する上で、必要不可欠なものと捉え、引き続き重要な役割を果 たしていくと考えられていることによる。

複雑化する防衛上の問題・国際情勢


 これまでの防衛政策は、冷戦時代においてはソ連という仮想敵国、冷戦後も潜在的仮想敵国を想定するという、「国」あるいは「地域」単位 の防衛戦略が基本であった。ところが、今回起きた米国同時多発テロ事件によって、「国」ではなく、多国籍という何カ国にもまたがるテロ「組織」であり、複雑な様相が浮き彫りとなった。「組織」といっても、今回のように国際社会を巻き込み、空爆等大掛かりな事態へと発展したものは、もはや「事件」の範疇には収まらない。この点で、戦時国際法の解釈と適用が大きく変わり、日本の防衛のみならず、世界中に防衛上大きな問題を投げかけている。
 前述した冷戦終結後の国際情勢及び今回のような状況において国際社会は、金融・貿易等だけでなく、防衛についても相互依存関係を持ち、国連や国連安全保障理事会決議の下、集団的自衛権を行使して防衛にあたる方向にある。「集団的自衛権を保有するものの、行使できない」日本は、この中でどのような国際協力をしていくのか、これまで以上に踏み込んで話し合い、制度の整備をしていかなくてはならないと思われる。

防衛に関する法整備の必要性

 米国同時多発テロ事件により、時限法として「テロ対策特別措置法」が制定され、「自衛隊法」の改正等が行われたが、自衛隊員の「武器使用規定」(17頁・表参照)など、見直されるべき部分はまだ多い。平和と安全の確保及びより安定した安全保障環境の構築を目指している以上、「国際法上、集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であるが、集団的自衛権を行使することは、憲法上許されない」という「憲法第9条についての政府見解」を含めた見直し、法整備がなされる時期にきているのではないだろうか。