「最終意見」が公表される

 政府の司法制度改革審議会が、2年間に渡る63回の審議を終え、本年6月12日に「最終意見」をまとめた。2004年に現行司法試験の合格者を1,500人とすること、2004年度の法科大学院開校、裁判の迅速化、裁判員制度の創設等が明記されている。
 審議会の発足にあたっては、経済界からの司法制度改革の要求を受けた一面 を持つが、司法に関わる先駆者による、先見的な政策提言があったからこそ実現に至ったことも事実である。

国民に身近な司法へ


 「最終意見」には国民の司法参加が強調されている。「裁判沙汰」という言葉に象徴されるように、これまで、司法サービスを受けることに対して世間体を気にしたり、どこか罪悪感があり、司法とはできるかぎり避けるべきものとしてきたことが一般 的であった。しかし、国民の司法参加が「最終意見」において重要視された背景には、国民に身近な司法の実現の為に、国民一人ひとりが自己責任を持ち、「法の支配」を身近なレベルで実現することが期待されているのではないだろうか。

これからの日本の司法が目指すべきもの


 また、本誌6月号でも特集を組んだように、WTOにおいて自由職業サービス(法律サービス、会計・監査および簿記サービス、税務サービスなど)も貿易自由化交渉の対象になっている。つまり、司法の国際化はこれからの日本にとって重要な論点であり、今後、十分な議論が必要とされる。今後の司法制度改革の議論においては、弁護士など法律専門職のグローバル化が欠くことのできない視点となる。

隣接法律専門職種の可能性


 さらに、具体的な国民への司法サービスの在り方として、隣接法律専門職種の業務拡充を踏まえて、裁判外紛争処理手続(ADR)、総合的法律経済関係事務所(ワンストップ・サービス)についても、実現に向けての動向が注目される。隣接法律専門職種に関する動向が、国民へのリーガルサービス供給が充実していくのかどうか、鍵を握っている。

司法制度改革、今後の展開に向けて


 7月に設置された司法制度改革推進準備室(本年冬には司法制度改革推進本部と改称予定)において、関係各省庁参画のもと、「最終意見」の具体化作業が始まった。そこで、今回は、司法サービスを受ける我々国民の意識、司法の国際化を含めた日本の司法の今後の在り方、「最終意見」に対する各資格者団体の見解、というアプローチにより、様々な現状分析を行い、これからの司法制度改革の行方を特集する。

司法制度改革のカテゴリー

憲法が規定する司法権

 「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを解決する国家の作用」
 【佐藤幸治「憲法」(青林書院・1995)】

裁判所の機能


 裁判所は、日本国憲法に特別の定めのある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、
 その他法律において特に定める権限を有する。(裁判所法第3条1項)

法律上の争訟


 [1]当事者間の具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いであり、
 [2] 法令の適用により終局的に解決できるものであること
  ↓
 この定義にかかる部分が、今回の司法制度改革のカテゴリーである。

資料 図解「最終意見」

ここをクリックしてPDFファイルでご覧ください]

司法制度改革審議会「最終意見」を基に、編集部作成