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ロシア株式会社法 |
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佐藤賢明(糸賀法律事務所ロシアプロジェクト研究員・二松学舎大学講師) |
市場経済の確立を目指している現在のロシアでは経済活動を行うさまざまな形態の組織がある。これら経済組織には株式会社、有限会社等がある。その中でも最も重要な株式会社を規律する法として「株式会社法」がある。 |
株式会社の活動などを規律する法律には、民法典(第96条〜第104条、1996年3月施行)と株式会社法(95年12月施行)がある。これらの法律では株式会社を、定款資本が特定数の株式に分割される会社で、その社員(株主)は、会社の債務に責任を負わず、保有する株式の価額の範囲内で会社の事業にかかる損失の危険を負担し、株価の金額を全額払い込んでない株主は、自己に帰属する当該株の未払い部分の価額の範囲内で株式会社の債務について連帯して責任を負うと、 |
規定している(民法典第98条、株式会社法第2条)。ちなみに、ペレストロイカが始まり民法典や株式会社法が制定される以前に会社法の役割を果たしていたのが、1990年12月に施行された「企業及び企業活動法」であった。この法律が施行された当時のソ連では、自由な経済活動を保障する法律として大いに歓迎された。その後、改革が進み株式会社法の制定へとつながった。現在ではこの法律は一部しか効力を持っていない。 |
株式会社は国家登記された時法人とみなされる。そして、独自の資産、独立した貸借対照表を有し、裁判では原告や被告となることができる。 株式会社は法律に違反しない限りさまざまな経済活動を行うことができる。 |
業種によってはライセンスが必要とされる。例えば、銀行、保険業などである。ロシアの国内外において銀行口座を開設することができる。会社印は正式名および住所が入った丸型の印である。 |
ロシアの株式会社には二つの形態がある。 公開型と閉鎖型である(民法典第97条、株式会社法第7条)。これらの二つの型の基本的差異は; (1) 株主が自己の株をほかの株主の同意を得ないで譲渡が可能であるのが公開型で、同意が必要なのが閉鎖型である。 |
(2) 閉鎖型の社員は50名以内であり、それ以上であれば公開型に組織の変更が必要であり、公開型は社員数に制限がないなどである。 (3) 最低定款資本が、公開型は最低賃金の月額1,000倍、閉鎖型は最低賃金月額の100倍である。 |
株式会社の設立には、新規の設立または既存法人組織の編成替え(新設合併、吸収合併、分割、分離、改組)で可能である。また国家登記が必要である。 株式会社の設立は、まず発起人による設立総会により行われる。発起人には、自然人も法人もなることができる。発起人は株式会社設立に関連する |
債務や会社登記前に発生する債務に連帯して責任を持つ。発起人は設立までの実行手続、定款資本額、発起人間で分配する株式の種類および支払方法、発起人の権利義務等を書面にて契約形式で作成締結する。この契約書は会社の設立文書にはならない。 |
株式会社設立で最も重要なのが定款である。定款は、株式会社の設立文書である。その規定はすべての会社の機関、株主等が遂行する義務である。定款には以下の事項が含まれる。正式名称(あれば略称)、住所、公開型か閉鎖型か、 | 株式の数、額面価額、株式の種類(普通株、優先株)、それぞれの種類の株式の所有者、株主の権利、定款資本、株主総会の準備および開催手続、株主総会の権限、管理機関の構成と権限、定款変更手続等が含まれる。 |
株式会社の定款資本(民法典第99条、株式会社法第22条〜第30条)は、株主が取得した会社の株式の額面価額から構成される。普通株式の額面はすべて均一でなくてはならない。株式会社は普通株式のほかに優先株式を発行することができる。定款には、株主が取得した株式の数と額面価額が定められる。 |
定款資本の増加は、株式の額面価額の増加または追加的な株式の発行で実施できる。それに伴う定款の変更は、株主総会もしくは定款の規定または株主総会の決議により取締役会の決議にて行われる。 |
株主総会は株式会社の最高管理機関である(民法典第103条、株式会社法第47条〜第63条)。株式会社は必ず株主総会を開催しなければならない。総会の時期は定款で定めることができる。 |
ただし、会社の会計年度の終了時よりさかのぼる2カ月前または6カ月後であってはならない。 株主総会でのみ討議・決議される事項は以下の通りである。 |
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取締役会が業務全般の指導を行う。任期は1年、何回も再選可能。取締役の構成は定款または株主総会にて決まる。しかし、決議権を持つ株主が | 1,000人以上の株式会社の場合には取締役は7人以上、1万人以上の決議権を持つ株主の場合9人以上の取締役を選出しなければならない。 |
株式会社は株主総会の決定により解散することができる。また、裁判所の決定により解散する場合もある。自主的解散の場合、取締役会は解散と清算委員会(委員)の設立に関する決議を株主総会に求める。株主総会は、会社の解散と清算委員会(委員)の設立を決める。 |
株主総会で清算委員会が任命されたら、直ちに会社の経営権は同委員会に委譲される。 このように、ロシアの株式会社も西側のそれとほとんど変わらない法形態をとっていることがわかる、ただし、実際の経営は別である。現在模索中であると表現するほうが正しい。 |
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